感情に流されないリーダーシップの鍵
ビジネスの現場では、嬉しい成果が出る日もあれば、厳しい現実に直面する日もあります。嬉しい時は嬉しい!それはとても幸せな気持ちです。他方で、リーダーの役割という観点からは、そのような感情の波に左右されず、冷静かつ一貫した判断と行動を取ることが求められます。
ところが、実際には感情に揺さぶられた結果、部下とのコミュニケーションに影響が出たり、判断を誤ったりすることもあるのではないでしょうか。そして、後になって振り返ると「ああ、なんであの時あんなことを…」と後悔することもしばしば。私もそのような経験を何度かしてきました。
今回は、感情が激しく動く瞬間に陥りがちな「あるある事例」と、感情をうまく処理するための考え方について書いてみようと思います。
感情が乱れたときの「あるある事例」
1. 嬉しい時の「油断」
大きなプロジェクトが成功し、達成感に満たされた瞬間。その喜びから、つい周囲への配慮が薄れたり、次の課題への準備を後回しにしてしまうことがあります。
「周囲への配慮が薄れた結果、リーダーが成し遂げたプロジェクトみたいになって気持ちが白けた」という話を聞いたことがあります。また、「主任が大喜びすることで職場全体が‘お祝いモード’になり、‘達成後は休憩モード’が慣例のようになっている」という例も耳にしたことがあります。良いとか悪いとかの話ではありませんが、リーダーとしての一貫性を持った行動という側面では、周囲を巻き込んでしまっている感は否めませんね。
2. 辛い時の「短気」
トラブルが発生し、自分のリーダーシップが試される場面では、焦りやプレッシャーから短絡的な行動に走ることがあります。例えば、部下の小さなミスを過剰に指摘してしまったり、全体の流れを見失い、責任を転嫁するような態度を取ってしまったりすることが挙げられます。
後になって振り返り、「感情的になりすぎた」と後悔することも少なくありません。辛い時ほど、本当に感情を処理するのが難しいですね…。
3. 行き詰まり時の「無気力」
大きな壁に直面し、解決策が見えない状況では、「どうにかなるだろう」と感情を押し込めて何もしない選択をしてしまう場合もあります。
この場合、外からは分かりにくく、周囲の人も戸惑うことが多いのではないでしょうか。
一見落ち着いているように見えても、実は行動が停止していることがあります。
こうした停滞感が、チーム全体に広がってしまうこともあるのです。
感情を整理するための自己対応
こうした感情の波を乗り越えるためには、日々の意識的な取り組みが欠かせません。
例えば、次のようなアプローチを試すのがおすすめです。
1. 感情を「観察」する
まず大切なのは、感情が湧き上がった瞬間にその感情を外に出さず、自分の中で一度整理してみることです。
わたし流に言うと、「まだ表に出さない」。
感情がまだ「出来立てほやほや」で熱い状態では、相手に伝えても正確に受け取ってもらえないかもしれません。
そこで、湧き上がった感情にラベルを付けてみてください。「嬉しい」「辛い」「焦っている」などと具体的に表現するだけで、冷静さを保つ一歩を踏み出せます。心理学ではこれを「感情のラベリング」と呼び、実際に効果があると言われています。
2. 感情の「波」を受け入れる
感情を抑え込むのではなく、その存在を認めることも重要です。
わたし流に言うと、「心もわたしの一部」です。
「この状況なら、焦りを感じるのは当然だ」「怒りを感じるのも自分だ」と受け入れることで、自己否定感を軽減し、次の行動に集中する余裕が生まれます。
3. 存在するから扱える
感情の中でも、特に扱いが難しいのは「怒り」や「否定」といった感情でしょう。これらは「できるだけ味わいたくない」と感じる人も多いかもしれません。私も同じ気持ちです。
しかし、感情が「ある」から、私たちはそれを扱うことができるのです。
わたし流に言うと、「感情は誕生するから扱える」のです。
無から何かを生み出すことはできないように、感情も何かがきっかけで誕生します。その誕生した感情を、猛獣のように扱いづらいと感じることがあっても、それが「存在する」ことで、私たちの成長の機会となるのです。感情の存在を受け入れ、それを「扱う」姿勢を持つことで、リーダーとしての成熟度を深められるでしょう。
4. チームに「共有」する
リーダーとして、感情をコントロールするのはもちろんですが、適切に共有することも忘れてはなりません。
わたし流に言うと、「わたしの成長レベルが表に出る瞬間」なのです。
例えば、
ケース1:成功したプロジェクトのリーダー
大きなプロジェクトを成功に収めたチームのリーダーが、誰よりも一番喜び、はしゃいで、浮かれている状況をイメージして下さい。
対して、大きなプロジェクトを成功に収めたチームのリーダーが、誰よりもメンバーの努力と結果を誇らしく思い、「成功は皆さんのおかげです、ありがとう!」と伝える状況をイメージして下さい。
ケース2:難局に直面したプロジェクトのリーダー
大きなプロジェクトを進めるにあたって数々に難題に直面し、プロジェクトが長期化してメンバーの疲弊が大きいチームのリーダーが、誰よりも一番落ち込み、やる気を失い、泣き出しそうな表情でいる場面をイメージして下さい。
対して、大きなプロジェクトを進めるにあたって数々に難題に直面し、プロジェクトが長期化してメンバーの疲弊が大きいチームのリーダーが、誰よりもメンバーの努力と結果を誇らしく思い、それゆえに現状に陥っていることに心を痛め、「今は大変な状況で、皆さんの心境もいかばかりかと思います。その上で、私たちの力を結集して、この状況を抜け出しましょう。」と不安を隠さずに、共に進めようとする気持ちを伝えたりすることで、チームの凝集性も高まるかもしれません。
このように、リーダーの感情の扱い方ひとつで、チームに与える影響は大きく異なります。感情を適切に共有し、チームの状況に寄り添うリーダーは、メンバーに信頼感と安心感を与え、結果的にチーム全体の士気を高めることができます。一方で、感情的な反応や過度な沈黙は、チームの方向性を見失わせ、メンバー間に不安や不信感を生む原因にもなりかねません。
では、リーダーとして感情をどのように扱い、伝えるべきなのでしょうか?ここで重要なのは、感情をコントロールするだけでなく、それを「建設的に活用する」ことです。
感情処理力を鍛えるリーダーシップ研修のすすめ
これらの感情処理能力は、日々の意識改革だけでなく、体系的な学びによっても鍛えられます。最近では、リーダーシップ研修の中に感情処理やメンタルヘルスを扱うプログラムを取り入れる企業が増えています。私も研修で「感情の取り扱い」の手法をご紹介しています。わたしのおすすめは、目線の移動なのですが、とても身近な手法なので皆さん喜んでくださいます。
小さな一歩を踏み出すために
その感情が生まれた「直後」(できるだけ)に、今の感情を書き出すことをお勧めしています。
書き出したら、なぜそのような感情になったのか、書き出す。
これを繰り返していくと、大事なものが見えてきます。
この話もまたいつか、コラムで書けると良いなと思います。
今回は、
感情はリーダーシップの一部であり、私たちを人間らしくする大切な要素、だからこそ、感情に流されず、受け止めて向き合うことが大事。そしてそのプロセスが、成長を続けることであり、組織全体の成功へとつながる、
ということをお伝えしたいと思います。
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