
本来のCは、“ズレを確認する”ためのもの
「ふりかえりの時間をとってはいるけど、なぜかモヤモヤが残るんです」
あるリーダーの方が、研修の中でこんなふうにお話しされました。
たしかに“C”(Check)の時間を設けている職場は増えてきました。
でも、その場が「うまくいかなかった理由を話すだけの時間」や、「できなかったことの言い訳をする時間」になってしまっているケースも、実は少なくありません。
PDCAにおけるCの本来の役割は、「計画と結果のズレを確認すること」。つまり、「ズレを見つける」ことが目的で、「誰が悪かったか」を問うことではありません。
冷静に、客観的に、何がズレたのかに目を向ける。それがCの時間の本質です。
にもかかわらず、現場ではこのCの時間が、無意識のうちに「反省会」や「責任追及の場」にすり替わってしまうことがあります。その違いに気づかないまま進めてしまうと、次の改善(Act)どころか、チームの信頼関係にヒビが入ってしまうこともあるのです。
行動ではなく“人”に焦点が当たると、学びは止まる
ふりかえりの場で、ついこんな言葉が出てしまったことはないでしょうか。
「〇〇さんの対応が遅かったのでは?」
「結局、誰がそのミスに気づいていなかったのか?」
これらは一見、状況を明らかにしようとする発言のようにも見えますが、矛先が“人”に向いてしまうと、空気が一気に冷たくなります。
Cの目的は“人”を裁くことではなく、“行動のズレ”を確認することです。たとえば、「Aさんが報告をしなかった」という事実があった場合、それを責めるのではなく、「報告のタイミングやルールが曖昧だった」「担当を決めていない」「あのとき声をかける余裕がなかったのでは?」と、行動や仕組みに目を向けることが大切です。
誰かを指さすのではなく、出来事を一歩引いて見てみる。そうすることで、チーム全体の視点が「問題の原因探し」から「改善につながるヒント探し」に変わっていきます。
“誰がやったの?”の発言がチームの改善力を奪ったケース
ある企業のチームミーティングでの出来事です。
大きなミスが発覚した週次会議。リーダーが最初に言った言葉は、「で、誰がやったの?」でした。
一瞬にして、会議室の空気が張り詰め、発言する人がいなくなってしまいました。
結局その日は、全体のふりかえりではなく、「ミスの所在」と「再発防止の確認」という名の問い詰めのような感じで終わってしまったそうです。
この場面で問いかけるべきだったのは、「なぜこのミスが起きたのか?」「どんな兆しがあったか?」「仕組みや連携に見落としはなかったか?」といった問いだったのではないかと思います。
“誰が”ではなく“なにが”ズレたのかを見る視点がなければ、改善は個人の頑張り頼みになってしまい、仕組みやチーム全体の再設計にはつながりません。
ズレを見つける→問いを立てる→次のPへ
Cは、観察と洞察のフェーズ。冷静に、静かに、ズレに気づくための時間です。CのあとにはA(改善)がありますが、そのAは、気合いや努力で何とかするものではなく、「気づいたズレに、どう向き合うか」という姿勢の積み重ねで生まれます。そしてその“気づき”が、次のPlan(計画)をより実行可能なものにしていくのです。
つまり、Cの時間は「次のPにつなげるための橋渡し」でもあります。
ふりかえりのとき、場の空気がピリつくことがあったら、それは、誰かを責めようとしていないか、自分たちの視点が“人”に偏っていないか、立ち止まってみるサインかもしれません。
ズレを見つける → 問いを立てる → 次のPへ
この流れを意識することで、Cは前に進むための時間になる。
と、私は思うのです。
