
「リーダーって、結局“強くて頼れる存在”でなければならないのでしょうか?」
この質問に、わたしは「はっ」とさせられます。
なぜなら、私が意識しないまま抱いてきた“理想のリーダー像”は、いまだに「カリスマ的で、正解を知っていて、常に前に立つ」姿に偏りがちだとわからされた問いだからです。
今の時代に求められるリーダー像
今の時代に求められるリーダー像は、そのイメージから大きく変わりつつあります。
日本社会は長らく「年功序列」「終身雇用」といった安定志向の仕組みの中で育まれ、リーダーも「経験を積んだ上で指導する立場になる」ことが一般的でした。
そのため、リーダーは“正解”を示し、“部下を導く”ことが役割だと考えられてきました。
しかし、これまでのシリーズでお話してきたように、社会も働き方も、そして人の価値観も大きく多様化しています。不確実で答えのない時代において、従来の「上から下へのリーダーシップ」では立ちゆかなくなっています。
最近注目されているのは「共創型リーダーシップ」や「支援型リーダーシップ」。つまり、メンバー一人ひとりの力を引き出し、共に考え、成長の場を整える“場づくり”の達人としてのリーダー像です。
自ら考え、自ら動く組織
ある中堅メーカーで、経営陣が「権限委譲」と「対話文化の醸成」に力を入れたところ、現場の提案数が飛躍的に増えました。その企業では、部下に「考えさせる」構造を用意し、その時間を意図的に設け、リーダーには「問いを立てる」姿勢を徹底したそうです。
このような事例からもわかるように、「自ら考え、自ら動く組織」をつくるには、リーダー自身が「変化を恐れず、自己開示ができる存在」であることが重要です。
調和を重んじる
また、日本特有の“空気を読む”文化や“調和を重んじる”気質は、グローバルでは「消極的」と捉えられることもありますが、実は非常に高い「状況察知力」や「多様性の調整力」にもつながっています。こうした側面を活かせば、日本ならではの強みといえるのではないでしょうか。
未来の日本のリーダーに求められるのは、
・一人ひとりの多様性に応じて支援できる柔軟性
・組織内外の声に耳を傾ける誠実さ
・自分自身の価値観を持ちながらも、変化を受け入れるしなやかさ
そして何より、
・「完璧さ」よりも「真摯さ」だと思います。
これまでの5回のコラムを書きながら、
「リーダーとは問い続ける存在である」と再確認することができました。
答えのない時代だからこそ、自分の思考の癖に気づき、人と対話し、学び続ける。
その姿勢こそが、組織に希望と可能性をもたらすのではないでしょうか。
このコラムが、みなさんの現場でのヒントになれば幸いです。
