営業時間:平日10:00~17:00

070-5054-3110

休業日:土日祝日 年末年始季節休暇

「振り返りが苦手な人」でもできる省察サポート

〜デューイとコルブを“現場で使える言葉”に翻訳する〜

OJTの中で最も多い悩みのひとつに、

「若手が振り返りを苦手としている」

「ふりかえりをしても“感想”で終わってしまう」

があります。

確かに、サポートをしていても“ふりかえる”という行為そのものに苦手意識を持つ人は案外多いと感じます。

しかし、その背景には、

個人の能力ではなく“文化と構造の問題が潜んでいるように思います。

デューイもこう述べています。

> “We do not learn from experience; we learn from reflecting on experience.”

> 「人は経験そのものから学ぶのではなく、経験を省察することで学ぶ。」

それにもかかわらず、

日本の職場では“省察のための構造”がほとんど準備されていません。

では、どうすれば「振り返りが苦手な人でも省察できる」状態をつくれるのでしょうか?

■そもそも「なぜふりかえりは難しいのか?」

振り返りが苦手な理由には、共通点があります。

① 「正解を探してしまう」文化の影響

振り返りとは「意味の探索」なのに、

多くの人は「これで合っているだろうか」と答え合わせをしようとしてしまいます。

この“正解志向”は、省察の敵です。

② 自分を客観視することは、そもそも難しい

脳は、失敗や不快な経験を避けるようにできています。

そのため、内省は本能に逆らう作業なのです。

③ 感情を扱う場が不足している

「悔しかった」「不安だった」といった感情を言語化する文化が弱いと、

省察は事実の羅列だけで終わります。

■デューイの「省察的思考」を“3ステップ”に翻訳する

デューイは省察を次の5段階に整理しました。

1. 困難に気づく

2. 問題を明確化する

3. 仮説を立てる

4. 推論で吟味する

5. 行動で検証する

現場で使いやすくするために、これを3ステップに凝縮します。

【ステップ1:気づく(What?)】

* 何が起こった?

* どんな場面だった?

* 誰がどう反応した?

ここでは 「事実の回収」が目的です。

意図や解釈はまだ扱いません。

【ステップ2:意味づける(So what?)】

* なぜそうなった?

* 自分はどう感じた?

* 相手はどう感じたと思う?

ここで初めて「内的状態」に触れます。

デューイはこう述べています。

> “Reflection involves turning a subject over in the mind.”

> 「省察とは、心の中でその出来事をひっくり返してみることである。」

まさに“意味を揺さぶる”プロセスです。

【ステップ3:次につなげる(Now what?)】

* 次は何を試す?

* どこを変える?

* 何をやめて、何を続ける?

ここで学びは“行動”に変わります。

コルブの「能動的実験(Active Experimentation)」と直結します。

■コルブのサイクルを“質問セット”に落とし込む

振り返りに苦手意識を持つ人でも使えるように

「テンプレート化」 すると、職場での実践度が上がります。

◆ コルブの4段階 × 使える質問

① 具体的経験(Concrete Experience)

・ 何が起きた?

② 省察的観察(Reflective Observation)

・そのとき、自分はどう感じた?

・相手の反応で気づいたことは?

③ 抽象的概念化(Abstract Conceptualization)

・なぜそうなったのだろう?

・他の場面にも共通するパターンは?

④ 能動的実験(Active Experimentation)

・は何を変えてみる?

・どんな試し方ができそう?

これだけで“感想文のふりかえりが、

一気に“成長につながる省察に変わります。

■ふりかえりができない若手にどう寄り添うか

「問いのデザイナー」になる

指導者がすべきことは、

若手から“正しい答え”を引き出すことではありません。

大切なのは、

問いによって思考を支えること。

これが指導者の役割だと思います。

■ 若手が言葉に詰まったときに使える“応急処置の3問”

1. 「一番印象に残った瞬間はどこ?」

    → 感情の入口を開く

2. 「次に同じ場面が来たら、何が変わっていそう?」

    → 未来のイメージをつくる

3. 「今日の自分を一言で表すと?」

    → メタ認知を育てる

■省察文化は“一人の意志”では作れない

職場に必要なのは「構造」です

振り返りは習慣です。

習慣は、個人の意思ではなく「構造」が作ります。

◆ 省察が根付く職場の構造とは?

  • ミーティングに必ず「ふりかえり3分」を入れる
  • 1on1で「感情の棚卸し」から始める
  • 業務日報を“事実→意味→次へ”の書式にする
  • 成功体験を共有する“小さな表彰”を取り入れる

これだけで、

省察のハードルが大幅に下がり、

若手の成長速度が目に見えて変わります。

■省察はスキルではなく“場のデザイン”

デューイは省察についてこう述べています。

> “Reflection is the reconstruction of experience.”

> 「省察とは、経験を再構成することである。」

つまり、省察とは「もう一度経験を作り直す」作業です。

そのために必要なのは、

* 問い

* 対話

* 構造

* 安全な場

の4つです。

若手が振り返りに苦手意識を持っていても、

この4つを揃えれば 誰でも省察できるようになります。

そして、職場全体が「意味から学ぶ文化」に変わります。

この記事を書いた人

marco

関連記事

  • OJT
  • コミュニケーション
  • チームワーク
  • 仕事のスキル
タスク化に関するよくある質問

タスク管理が苦手な人へ 「タスク管理って、なんだか面倒くさいんですよね」コーチン […]

  • コミュニケーション
  • 職場の心理的安全性
  • 能力開発
  • 自己内プロセス
「No」と返ってくる人との距離感、どうしていますか?

何気ない会話を通して、相手との気持ちのつながりや共感が感じられると、なんだかほっ […]

  • いろいろプロセス
  • 仕事のスキル
PDCAサイクルの回し方(2)『すごい計画』が『すごい足かせ』になるとき

行動につながらない計画は、“回らないPDCA”を生み出す 「まずはしっかり計画を […]

  • グループプロセス
  • コミュニケーション
  • チームワーク
本当に“聴けて”いますか?

「ちゃんと聞いてるよ」と思っていても、実は“聴けていない”ことってありませんか? […]

  • コミュニケーション
  • マネジメント
  • リーダーシップ
  • 能力開発
自分の人生を生きるリーダーシップ

仕事に追われる日々、気づくと忙しさが自分の価値を証明するものだと思い込んでいた時 […]

  • いろいろプロセス
  • バイアス
  • リーダーシップ
「ポジティブ」とは

「ポジティブ」とは何でしょうか? 個人的には明確な定義を持っていましたが、最近、 […]