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なぜ「正論」は部下のやる気を削ぐのか

PM理論の深層② 触媒としてのM

前回は、私が良かれと思って振りかざしていた「計画P」が、相手にとっては単なる「圧力P」になっていたという発見をお話ししました。
今回は、PM理論のもう一つの柱である「M機能(集団維持機能)」の役割の観点から、お話しします。

M機能は「優しさ」や「慰め」ではなく、
三隅二不二氏の理論を紐解くと、M機能の正体は、P機能(論理や圧力)を劇的に変化させる「化学触媒」であることが見えてきます。

論理は「劇薬」

PM理論において、P機能(目標達成)は組織を前進させるエンジンですが、同時に副作用も伴います。 小久保(2002)の研究によれば、P行動、特に成果を強く求める「圧力P行動」は、部下に「心的抵抗(Psychological Resistance)」や緊張、葛藤を与え、動機づけを減少させるリスクがあるとされています。

人間は、外部から「こうすべきだ(正論)」「働け(圧力)」と一方的に迫られると、無意識のうちに「心理的リアクタンス(反発心)」を生じさせます。

「おっしゃる通りです」と口では言いながら、腹の底では「あんたに言われたくない」とブレーキを踏む。 こっ・・怖い・・・

録画の中の私が直面していたのは、まさにこの現象のようにも思えます。
M機能というクッションがない状態で放たれた「正論」(と言うより高飛車な発言、か!?)は、負の産物だったのではないでしょうか。

M機能がないと、Pは「外部からの強制」になる

ここで非常に興味深い理論があります。
三隅二不二氏は、P機能とM機能の相互作用について次のような仮説を提唱しています。

M機能が低い場合: リーダーがP行動(圧力)を強めると、それは部下にとって「外部からの強制的な圧力」と受け取られる。
M機能が高い場合: リーダーがP行動(圧力)を強めても、それは部下の「内部からの圧力(自律的なやる気)」へと質的に転換される。

つまり、日頃から配慮や信頼関係(M)がない上司が言う「頑張れ」は、「うるさいな、やらされている」という不快感(外部圧力)にしかなりません。 (いや、確かにそうだ。わたしは、この感情を部下の立場で経験している)
しかし、信頼関係(M)がある上司が言う「頑張れ」は、「この人の期待に応えたい、自分も頑張りたい」という自発的な意欲(内部圧力)に変わるのです。(いや、確かにそうだ。わたしは、この感情も、後輩の立場で経験している)

M機能は「触媒」

M機能は、論理(P機能)を相手に受け入れさせることができるし、成果に結びつけるための必須の「触媒(Catalyst)」!

触媒とは、それ自身は変化しないが、他の物質の化学反応を促進する物質のこと。
M機能(相手への配慮、傾聴、受容)があって初めて、P機能(論理的な指摘、高い目標)という物質は、相手の心の中で「やる気」というエネルギーに化学変化を起こしていく、という考え方。

触媒を入れ忘れた化学実験が失敗するように、M機能を欠いた私の論理展開が、相手の拒絶反応しか生まなかったのは科学的な実験と合致しているように思えました。

「論理」を「納得」に

あの録画の中で、私がすべきだったことはなんだったんだろう。

それは、論理の切れ味を鋭くすることではなく(当たり前!)、相手の話に耳を傾け、その背景にある意図を汲み取り、「尊重」を明確に示す(M機能)ことだったと思います。

普通に、「どうしてそれができていないんだ!」と思いました。

「正しさ」だけでは、人は動かないことは知っていたはず。痛い目にもたくさんあってきたはず。
論理というは、共感あって初めて芽吹くのに。

私は元々の素質もあったのでしょうが、仕事の年月が重なる中でいつしか「土壌作り」をサボり、種を叩きつけて「なぜ育たないんだ」と怒鳴るような真似、そんなスタンスだったように感じられました。

この「理屈っぽさ」を卒業するためには、論理を捨てるのではなく、論理を機能させるための土壌(M機能)を、一から耕し直さなければ。

ここまでの9回で、私が直面した「理屈っぽい自分」を考察してその正体を探ってみたり、要因を探ってみたり、などしてきました。
・PM理論、
・語用論的失敗
・自己呈示
いくつかの仮説が立てられたのですが、長年染み付いた癖を変えるのは容易ではありません。

次回からは
変容のプロセスに話題を勧めてみようと思います。

人が変わっていく過程を、時間軸で捉える「TEM(複線径路・等至性モデル)」という手法を使って、
私の変化の旅を地図に描いてみたいと思います。

    描けるのか!?

この記事を書いた人

marco

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