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「演じる」と、どうなるか?

「なりきること」は、本当に人を変えるのか
― “演じる自分”と社会心理学 ―

「自信がないんです」

研修や1on1の場面でも、こうした声を耳にすることがあります。

その一方で、興味深いのは、
最初から自信満々だった人ばかりが、
リーダーシップを発揮しているわけではない、ということです。

むしろ、最初は不安そうだった人が、
ある時期を境に、少しずつ“その役割らしく”変わっていく場面を、
私は何度も見てきました。

これは単なる気合いや根性論ではなく、
心理学的にも説明できる現象があります。

今回のメルマガで紹介されていた
「認知的不協和理論」も、そのひとつです。

人は、
「自分の考え」と「自分の行動」がズレたままだと、
どこか落ち着かなさを感じます。

例えば、
「私は人見知りだ」と思っている人が、
毎日、笑顔で挨拶を続けているとします。

すると、
心の中で少しずつ整合性を取ろうとする働きが起きます。

「こんなに挨拶しているのだから、
案外、自分は社交的なのかもしれない」

そんなふうに、
“行動”に合わせて“自己認識”が変わっていくのです。

これは、職場の人間関係でも非常によく起こります。

例えば、
「私はリーダー向きじゃない」と言っていた人が、
後輩のフォローを繰り返すうちに、
周囲から「頼れる人」と見られるようになり、
本人も少しずつ“支える側の自分”を受け入れていく。

あるいは、
「人前で話すのが苦手」と言っていた人が、
ファシリテーション役を経験する中で、
徐々に“話せる人”になっていく。(わたしです笑)

ここで重要なのは、
「内面が整ってから行動する」のではなく、
“先に行動が変わることで、内面があとから追いつく”
という順番です。

私はここに、
社会心理学の面白さがあると思っています。

人は、
「自分がどう思っているか」だけでできているわけではありません。

「周囲との関係の中で、自分をどう扱っているか」
によっても、
自己概念が変わっていく
のです。

自己知覚理論

社会心理学には
「自己知覚理論」という考え方があります。

これは、
人は自分の心を、
“自分の行動を観察することで理解している”

という理論です。

つまり、
「堂々と発言している自分」を見れば、
脳は「自分は堂々とした人間なのだ」と解釈し始める。

少し不思議ですが、
人は意外と、
“自分自身のことを後付けで理解している”
面があります。

だからこそ、
「なりたい自分」を演じることには意味があるのです。

ただし、
ここで誤解してはいけないのは、
“無理に別人になる”
という話ではない、という点です。

私はむしろ、
「人は、環境や役割によって引き出される」
存在なのだと思っています。

職場でも、
安心して挑戦できる空気があるチームでは、
人は少しずつ役割を引き受け始めます。

逆に、
失敗が強く否定される環境では、
「自分には無理だ」という自己認識が固定されやすくなります。

つまり、
人は“個人の意思”だけで変わるのではなく、
“関係性の空気”によっても変わるのです。

クルト・レビンは、
B=f(P,E)
と示し、
人の行動は「その人(Person)」と「環境(Environment)」の相互作用によって生じると説明しました。

(平澤知穂著『オフィスコミュニケーショントレーニング 第2版』〜はじめに〜)

私は、組織づくりにおいて、「どんな人を採用するか」だけでなく、「どんな振る舞いを試しやすい空気があるか」が、とても重要だと感じています。

最初から完璧なリーダーはいませんし、最初から自信に満ちた人ばかりでもありません。

けれど、
少しだけ“そう振る舞ってみる”。

そして、
その行動を周囲が受け止める。

その積み重ねが、
人の自己認識を変え、
やがて、
「自分はこういう人間なのかもしれない」
という感覚につながっていく。

私は、
人の成長とは、
こうした“小さな演技”の積み重ねなのではないか、
と感じています。

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marco

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