
なぜ「やりたいこと、より、得意なこと」なのか
「やりたいことを仕事にするべきか、得意なことを仕事にするべきか?」
この問いは、人生の転機で多くの人が一度は立ち止まって考えるテーマではないでしょうか。
私自身、昔は「やりたいことを見つけなきゃ」と焦っていた時期がありました。
でも、やってみると意外としっくりこない(なんでや!)。
逆に、自分にとっては「普通にできること」が、他の人にとっては「すごい」と言われることもあって、びっくり。「どうして、それを仕事にしなかったの?」みたいなことを言ってもらった事もあります。
「あれ?こんな感じでいいの?」くらい、普通のこと。
若かりし頃の話です。
この年齢になって感じるのは、
「やりたいことは、感情の波に左右されやすいもの」だということです。
一方、得意なことは、「環境や状況が変わっても比較的安定して発揮できる力」だと感じています。
ビジネスの現場では「成果につながりやすいこと」を選ぶことが、組織にとっても本人にとっても納得感のある働き方に繋がると感じるシーンがよくあります。
だからこそ、「やりたいことが見つからない」と悩むより、「自分が得意なことってなんだろう?」という視点に立った方が、案外、早く結果につながることが多いのだと思います。
自分の「得意」に気づく30の問い
得意なことを見つけるために、特別な検査や自己分析ツールが必要なわけではありません。大切なのは、日々の中での“自分の傾向”に気づくこと。
たとえば、こんな質問はいかがでしょうか。
~あなたらしさを探すための、ちょっとしたふりかえり~
- なぜかよく「お願いされる」仕事や役割って、どんなものでしょう?
- 「助かった!」「さすがだね!」と言われたことの中に、自分ではあまり意識していなかった力はありませんか?
- 周りよりも早く終わらせられる作業があるとしたら、それはどんなときでしょう?
- 他の人が面倒そうにしているのに、自分はなぜか平気なこと、ありませんか?
- これまでの人生で、気づけば自然と引き受けてきた役割には、どんな傾向があるでしょう?
- 「よし、私がやるか」と思わず手が伸びる場面、どんなときでしょう?
- つい整理したくなる、まとめたくなることってありますか?
- 自分では“普通”だと思っていたのに、「それすごいね!」と驚かれた経験はありますか?
- 「こういうときって、どうしたらいいか、なんとなく分かるんだよね」と感じる場面はありますか?
- 同じ仕事をしていて、「ここはちょっと得意かも」と思うポイントはありますか?
- 誰かが困っているとき、「それ、こうしたらどうかな?」と自然に口が出るのは、どんな場面でしょう?
- 初対面の人から、どんな印象を持たれることが多いでしょう?
- 仕事で「ちょっと頑張ってみようかな」と思えるのは、どんな内容のときですか?
- 話し出すと止まらなくなるようなテーマ、あなたにもありませんか?
- 「あなたって、やっぱりそういうとこあるよね」と言われたこと、覚えていますか?
- 誰かを手助けしている自分に、ふと気づいたことはありませんか?
- 人の変化や気になるところに、すぐに気がつくタイプですか?
- 「これは任せて!」と言いたくなる場面、どんなときでしょう?
- チームで動くとき、気づいたら自然と担っている役割って、ありますか?
- 一人でいるときに、無意識でやっている作業や行動にはどんなものがありますか?
- 忙しいときでも、つい丁寧にやってしまう作業には、どんな傾向がありますか?
- 人に何かを教えたとき、「分かりやすかった!」と言われた経験はありますか?
- 同じ“業務”でも、なぜか疲れにくい・苦にならないものはどれでしょう?
- どんな人と一緒にいると、あなたらしい力が発揮されやすいですか?
- 「こういう場面は、なんだか自分が活きる気がするな」と感じることはありますか?
- マニュアルがなくても、「なんとなくこうかな」と進められることはありますか?
- うまくいかなかったとき、どうやって切り替えたり立て直したりしていますか?
- 振り返って「あのときはいい形になったな」と思える経験には、どんな自分の力が働いていましたか?
- 気づけば長く続けてこられたこと、その理由をひもといてみると…何が見えてきますか?
- 「頼まれごとの中で、なぜかいつも自分に回ってくる仕事は?」
さすがに30個出すのは大変でした(まるこのプロセス(^^;;)
これらに答えながら、自分の過去の経験やエピソードと照らし合わせていくと、共通点や「これだ!」とか「確かに!」のようなキーワードなどが浮かび上がります。
ちなみに、私が気づいた自分の“得意”は、「相手の話の内容を要約すること」です。そして、これが最も生かされる業務が「コーチング」「ファシリテーション」です。
最初は、それが誰かにとっての“価値”になるとは思っていませんでした。
でも、あるクライアントにお礼を言っていただいた時、え?と思いました。
自分にとって“自然なこと”こそが、他者から見ると“誰にでもできることではないんだよ”のケースは多いものです。
得意なことを仕事に活かすメリット
得意なことを仕事に活かす最大のメリットは、「成果につながるのが早い」ことです。なぜなら、すでにある程度の能力があるため、少しの努力でぐっと伸びるからです。
そしてもう一つは、「周囲との役割分担がしやすくなる」こと。
チーム内でお互いの得意を活かすと、「自分が苦手なことは、誰かが得意である」構図が自然とできあがっていきます。
これは心理的にも大きな違いを生みます。
「頑張って苦手を克服する」より、「得意を伸ばして、他の人と補い合う」方が、
仕事の充実感も高まり、無理が減ります(自分の経験から、断言してしまいます(^_^;)。
もちろん、不得意なことを避け続けるのではなく、「得意を軸にして苦手も整えていく」という考え方である、ということも付け加えさせていただきます。
「早く結果を出すには、まず得意なことに目を向けてみる」
これは、むしろ、ビジネスの成果や人との信頼関係を築くうえでの“最短ルート”になることが多いと思います。
やりたいことは、得意を通じて後から見えてくることもよくあります。
だから焦らず、「自分は何が得意なんだろう」と、丁寧に自分を見つめてみる時間を持つのは、とても意味のあることだと思います。
私たちは、思っている以上に“得意なこと”の中に、未来のヒントを隠し持っているのかもしれません。
