
後編:過去の成功から自由になり、変化を味方にする実践術
前編では、「成功」や「失敗」といった評価のラベルではなく、すべての経験を“実体験”として捉え直す視点の大切さをお伝えしました。そして、実体験から学びを引き出し、それを次の挑戦に活かすことが、未来を切り拓く鍵であることも。
では後編では、その学びをどう“実践”につなげていくか──具体的な行動指針をご紹介していきます。
6. 現状維持バイアスから抜け出す
実体験を活かすには、“今”に目を向ける必要があります。しかしここで立ちはだかるのが、「変わらないことが安心」という心理。これは「現状維持バイアス」と呼ばれ、私たちにとって非常に根深いものです。
特に過去にうまくいった経験があると、「あのときと同じようにやればいい」と思ってしまう。それも無理はありません。でもVUCA(変動性・不確実性・複雑性・曖昧性)の時代には、「昨日の正解が、今日の足かせ」になることも。
まずは「変わらないことのリスク」に気づくこと。そして、小さなことでもいいので、新しい一歩を踏み出してみることです。
変化は、大きな挑戦ではなく、小さな“やってみる”から始まります。
7. 組織の変革は、リーダーの“言葉”から始まる
一歩踏み出そうとしたときに、組織の中で変化を促す存在が必要です。その中心となるのがリーダーです。
組織を動かすのは、制度や仕組みだけではありません。人の“思い”や“語り”の力が、思った以上に大きな影響を持っています。制度すら、現場の感情や空気によって歪むのが現実です。
だからこそ、リーダーの「言葉」と「姿勢」が重要なのです。以下のような行動が、変革を支える土台となります:
- なぜ変化が必要なのかを、誠実に、明確に語る
- チームが共感できる未来像を描いて見せる
- 「一緒にやってみよう」と、そっと背中を押す
完璧な答えを出す必要はありません。不安な気持ちがあるのは当然です。
大切なのは、“本音で語ること”と“小さな挑戦を共にすること”。それが、チームの心を動かす力になります。
8. 新しいビジネスモデルは、“問い直し”から生まれる
リーダーの言葉が届いたとき、組織はようやく“自分たちの今”に目を向け始めます。ここで必要なのが、「問い直すこと」。
「今あるものをどう守るか?」という視点から、「そもそも今、本当に求められていることは何か?」という問いに切り替えてみましょう。
たとえば:
- 顧客の声をもう一度丁寧に聴いてみる
- デジタルを活用し、“届け方”を柔軟に見直す
- 自社の「強み」を、今の市場と照らし合わせて再定義する
過去の延長ではなく、“今”を起点に再設計する。その姿勢こそが、イノベーションの入り口になっていきます。
9. 戦略は、未来に“問いを投げる”ことから
問い直しを経て、次に考えるべきは「未来にどう進むか」です。
未来は誰にも予測できません。でも、「どうありたいか?」という問いを持つことで、自分たちの行動を選び取ることはできます。
ここで大切なのは、“知っていること”を武器にするより、“学び続ける姿勢”を持ち続けることです。
- リスクを恐れず、小さく試す
- 顧客や社会の声を、日々拾い続ける
- 「学び直し」を、個人でも組織でも習慣にする
成功とは、変化の中で「進化し続けたこと」──その姿勢そのものが、戦略になるのです。
10. 可能性の「鏡」
変化を進める中で、内側からだけでは見えにくいものもあります。
そこで効果を発揮するのが、第三者の存在です。
彼らの役割は、「答えを持ってくること」ではなく、「問いや気づきを引き出すこと」。
具体的には、
- 思考の癖や判断の傾向を“見える化”する
- 新しい視点を持ち込み、問いの質を変える
- 組織の中に眠る可能性を、そっと掘り起こす
まるで、鏡のように。その“映し返し”によって、組織は自らの答えを見つけていくのです。
結びにかえて:「栄光」を未来へつなげるために
成功も失敗も、すべては“実体験”です。
その実体験から学び、それを次の一歩に変える──このシンプルだけれど本質的な姿勢が、未来を切り拓く力となります。
そして、
- 変化を怖がらないこと
- 過去より“これから”に目を向けること
- 答えより「問い」を持ち続けること
こうした姿勢を日常の中に取り入れていくことで、「栄光の影」は「次の栄光への道しるべ」へと変わっていくでしょう。変わることに不安を感じたときは、「変わらないことのリスク」も、少し思い出してみてください。
ほんの少しの変化が、未来を大きく動かす、と、思っているまるこです。
