営業時間:平日10:00~17:00

070-5054-3110

休業日:土日祝日 年末年始季節休暇

OJTで「人が辞める職場」と「定着する職場」の科学

非教育的経験(mis-educative experience)が離職を生む

人が辞める理由は、給与や待遇だけではありません。

多種多様な職場を見てきて思うのが、
離職の根底には必ずといってよいほど経験の質の問題が潜んでいます。

辞める人の初期経験をたどると、そこにはデューイが言うところの
mis-educative experience(非教育的経験)が存在しています。

デューイは1938年の『経験と教育』で次のように述べています。
“Some experiences are mis-educative.”
「経験の中には、非教育的なものもある。」

そしてこの言葉は、現代のOJTにそのまま当てはまります。

1. 辞める人の初期経験には何が起きているか

離職を決意した人たちの話を聞くと、初期経験にいくつかの共通点があります。

1)丸投げ・孤立・サポート不足

初期配属の段階で、次のような経験が重なっていきます。
・質問しづらい雰囲気
・何を基準に判断すればよいか分からない
・困ったときに頼れる人がいない
・フィードバックがほぼない
これはデューイのいう「連続性が断たれた経験」です。

今日の経験が明日の経験につながらず、迷いと不安ばかりが増えていきます。

2)評価基準が見えない

知らないうちに失敗扱いされる。
沈黙していたら「主体性がない」と言われる。
助けを求めたら「そんなことも聞くの?」と言われる。
職場の環境が敵対的になった瞬間、経験は学びに変わりません。

デューイが述べた言葉。
“Experience arises from the interaction of the environment and the individual.”
「経験は環境と個人の相互作用で成り立つ。」

つまり、相互作用が悪化すれば、どんな経験も非教育的になってしまうのです。

3)小さな成功体験が積み上がらない

定着する人は必ず「最初の3ヶ月に小さな成功体験がある」という共通点があります。反対に辞める人の多くは、成功体験ゼロのまま3ヶ月を過ごしています。

・頑張ったことが評価されない
・正解と不正解が分からない
・認められた実感がない
人は、見通しのない経験を続けると学ぼうという意欲そのものを失ってしまいます。

2. 定着する人が経験していること

辞める人の初期経験と対照的に、定着する人には次のような特徴があります。

1)段階的に経験させてもらっている

階段を一段ずつ登るように業務が設計されています。
・スモールステップのタスク
・先輩との共同作業
・少し背伸びすれば達成できる課題

これはデューイのいう「連続性」を満たしている状態です。

2)感情を扱える対話の場がある

「どんな場面で困った?」
「何が不安?」
といった対話で、若手の内的状態が安定します。

コルブのサイクルでいえば、Reflective Observation(省察的観察)のプロセスが確保されている状態です。

3)成功体験が認識できる仕組みがある

若手が自分の成長を自覚できる環境が整っています。
・良かった点を具体的に伝える
・成長の変化を言語化して示す
・できたことを共有する機会をつくる
成功体験は「自然に生まれるもの」ではなく、「意図的に設計するもの」です。

3. 離職の根底には「非教育的経験」がある

離職の背景には、単なるミスマッチではなく
未来の可能性を閉ざす経験
が必ず存在します。

デューイはこう述べています。
“Every experience influences in some degree the possibilities of future experiences.”
「あらゆる経験は未来の経験の可能性に影響を与える。」

今日の経験が明日を閉ざす。
この積み重ねが離職につながるのです。

4. OJTを「辞めない職場づくり」に変える5つの実践

現場で今日からできる改善策をまとめました。

1)期待レベルを具体的に伝える
曖昧な基準は不安を生みます。最初に明確に共有します。

2)段階的に経験を設計する
階段モデルで最初の3ヶ月をデザインします。

3)心理的安全性を整える
質問しやすさ、失敗の扱い方、感情の扱い方を含め、環境要因を見直します。

 4)対話を組み込む
1on1やミーティングで、経験の意味づけを一緒に行います。

 5)成功体験の「最小単位」をつくる
小さな達成を言語化し、本人に実感してもらいます。

 5. 離職対策の鍵は「制度」ではなく「経験のデザイン」

人が辞めるか定着するかは、制度よりも
日々の経験の質
経験の意味づけ
経験を支える環境
によって決まります。

デューイが示した
教育的経験と非教育的経験の違い
は、まさに現代の離職問題の核心です。
職場での一つひとつの経験が、未来の可能性を開くのか、閉じるのか。
この設計が、若手の定着と成長を左右しているのです。

この記事を書いた人

marco

関連記事

  • コミュニケーション
  • チームワーク
  • リスクマネジメント
  • リーダーシップ
ポライトネスのお話

職場で「言いたいことをうまく伝えられない」「相手の反応がいまいち良くない」と感じ […]

  • コミュニケーション
  • チームワーク
  • リーダーシップ
【第1回】現代リーダーシップを取り巻く環境変化

最近、「変化のスピードが速すぎてついていけない」と感じたことはありませんか?実は […]

  • グループプロセス
  • コミュニケーション
  • チームワーク
イライラを“センサー”に変えるEQの知恵(4)

「部分価値」と「充分価値」──感情と行動の一致が心を自由にする イライラの奥にあ […]

  • OJT
  • いろいろプロセス
  • コミュニケーション
  • リーダーシップ
これは実話です。

ちぴぃヒラサワ 社会人一年生の出来事 新人として入社したばかりの頃、私は毎日指導 […]

  • いろいろプロセス
  • コミュニケーション
  • 人生:LIFE
感情と協働するという選択

「感情のナビゲート」を実践して気づいたこと このテーマを実践して感じたのは、「感 […]

  • OJT
  • いろいろプロセス
  • グループプロセス
  • コミュニケーション
  • チームワーク
  • ファシリテーション
  • 体験学習
ファシリテーションスキル完全ガイド

ただの「司会」で終わらせない、現場で活きる実践の極意 「今日の会議、結局何も決ま […]