アメとムチ あなたの指導はどっち?
あなたは部下にどのような指導をしていますか?
リーダーとして、あなたは日々、
部下の育成と目標達成に向けて奮闘していることでしょう。
しかし、部下に対してどのような方法で指導し、
影響を与えていますか?
あなたは部下を褒めることが多いですか?
それとも、ミスを指摘して厳しく罰することが中心ですか?
リーダーとしての指導方法は、
部下の成長やモチベーションに直接影響します。
ここでは、褒めること(報酬)と罰すること(強制)が
どのように違った影響を与えるのかについて、
リングとケリーの有名な実験を通じて考えていきましょう。
報酬勢力と強制勢力の比較実験
1965年に、心理学者のリングとケリーが行った「報酬と罰の影響」を比較した実験が、
褒めることと罰することの効果を理解するヒントになります。
彼らは、学習者がどのようなフィードバックによって成長しやすいかを調べるため、
被験者に特定のタスクを与え、
成功すれば報酬、
失敗すれば罰を与えるという形式で実験を行いました。
(特定の条件下で行われた実験です)
実験の詳細
この実験には50人の被験者が参加しました。
彼らは、コンピュータ上で複雑なパズルを解くというタスクに取り組み、
パズルを成功させた場合は、報酬グループには褒め言葉や金銭的報酬を与え、
罰グループにはミスを指摘し、次のチャレンジの時間を短縮するペナルティが与えられました。
タスクは難易度が徐々に上がっていき、
被験者は繰り返し挑戦し続けることで学習していきました。
実験の目的は、褒められることで成績が向上するのか、
罰を与えることで成績が向上するのか、その影響を測定することでした。
結果と仮説
彼らが結論づけた仮説は
「報酬(褒めること)が、長期的に見て学習速度を向上させ、強制(罰すること)よりも良好な結果をもたらす」
というものでした。
報酬を与えられたグループは、
初期段階から積極的にタスクに取り組み、
ミスを恐れずにチャレンジし続ける姿勢が見られました。
一方で、罰を与えられたグループは、
短期的には慎重になり、
失敗を避けるための工夫をしましたが、
次第にモチベーションが低下し、
タスクへの興味を失っていく傾向が強まりました。
リーダーとしての活かし方
リングとケリーの実験結果から、
あなたはどのようにリーダーシップを強化できるでしょうか?
部下に対してフィードバックをする際、
ポジティブとネガティブなバランスは
鍵となりそうですね。
褒めることの効果
褒めることで、
部下の自信につながり、
創造性や積極性が引き出されます。
たとえば、
「素晴らしい仕事だったね!」
「このプロジェクトに対する君の取り組み方は本当に効果的だった」
という言葉が、部下にとっては大きな励みになります。
また、報酬として
昇進やボーナスなどの具体的な評価も重要です。
これにより、部下は目標達成に向けてモチベーションを持ち続けやすくなります。
罰することの効果
一方で、ネガティブな影響を与えることが
全く不要というわけではなさそうです。
特定のルール違反やパフォーマンスの大きな失敗に対しては、
明確な罰則が必要となる場合があるでしょう。
しかし、こうしたネガティブなり協力は
部下の改善を促す手段として使われるべきです。
例えば、
「今回のミスは残念だったが、次に向けてどう修正していくか考えよう」
という建設的なフィードバックが有効です。
また、罰を与える際には、
個人への働きかけというよりも「行動に対してフォーカス」し、
改善の道を示すことが重要です。
他の研究結果と専門家の意見
リングとケリーの研究は非常に有名ですが、
これ以外にも多くの研究が同様の結果を示しています。
たとえば、教育心理学者のアルバート・バンデューラは、
観察学習理論に基づき、
褒めることがモデリング効果を促進し、
部下の行動に好影響を与えると述べています。
また、経営学者のダニエル・ピンクは、
内発的動機付けが報酬により強化されることが、
効果的なリーダーシップにおいて重要であると指摘しています。
部下の個性に合わせた指導
重要なのは、
部下それぞれの性格や価値観に応じた指導方法を選択することです。
例えば、内向的な部下に対しては、
静かな場で個別にフィードバックを与える方が効果的なことが多く、
外向的な部下にはチーム全体の前で褒めることが、
よりモチベーションを引き出すことができます。
また、ネガティブな影響力を行使する場合も同様です。
一部の部下には厳しいものが必要な場合がありますが、
他の部下には小さなペナルティが十分である場合もあります。
重要なのは、その目的が
部下の成長と改善に繋がることを意識することです。
罰の倫理的側面
何らかの処罰を与えることには、
倫理的な側面も考慮しなければなりません。
強制的な方法や過度な罰は、
部下の心理的な負担を増加させ、
最終的には生産性の低下や職場環境の悪化を引き起こす可能性があります。
リーダーとしては、
部下のメンタルヘルスにも配慮し、
慎重にその影響を考慮する必要があります。
実験結果の解釈と注意点
リングとケリーの実験結果は非常に有益ですが、
全ての状況に当てはまるわけではありません。
この実験は特定の環境下で行われたものであり、
部下の性格や職場環境に応じて結果が異なる可能性があります。
ですから、リーダーとしては、
この研究結果を盲信するのではなく、
自分の職場や部下に合わせた最適なフィードバック方法を見つけることが大切です。
これからのあなたのリーダーシップへ
リングとケリーの実験結果は、
褒めることが長期的に部下の成長と学習を促進することを示しています。
しかし、リーダーとしては、
処罰等の効果や適切な使用法にも注意を払い、
部下一人一人に最適なフィードバックを行うことが求められます。
褒めることと罰することのバランスを取りながら、
部下の成長をサポートすることが、
より強力で効果的なリーダーシップを築く鍵となるでしょう。
リーダーシップはあなたの中にある!
平澤知穂