本で何を得られるか
皆さん、本を読むとき、何を得ようとしていますか？私は長年、企業研修の現場で多くのビジネスパーソンと接してきましたが、意外と「本の読み方」に悩んでいる方が多いことに気づきました。
特に管理職の方々からは「本は読むけれど、実践に活かせている気がしない」という声をよく聞きます。実は私も以前はそうでした。本を読み終えた達成感はあるものの、数週間後には内容を忘れ、仕事で活かせずにいたのです。
しかし、本から得られるものは単なる「知識のインプット」だけではありません。本当の価値は、その知識をきっかけに自分の中で生まれる「想像」であり、その想像を「実験」に移し、そこから「学び」を得るサイクルにあるのです。
知識からの想像
本から得た知識は、それだけでは単なる情報の断片です。私がある会社の新任管理職研修で講師を務めたとき、参加者の多くは「リーダーシップの本は読んだけれど、自分のチームにはどう適用すればいいのかわからない」とコメントをもらいました。
そこで私が提案したのは「知識を自分のコンテキストに置き換える想像力」です。
例えば、本に書かれている「一対一の定期的な対話が重要」という知識を読んだら、「自分のチームのAさんとの対話ではどんな質問が効果的だろう？」と具体的に想像してみるのです。
わたしはコーチングでクライアントと共にこの経験をし、「今まで教科書的に読んでいた内容が、突然自分事として捉えられるようになった」と喜び合いました。想像力は、知識を自分の現実に引き寄せる強力なツールなのだと思います。
想像からの実験
想像だけでは机上の空論になりかねません。大切なのは、想像したことを小さな「実験」として実行してみることです。
ある製造業の人事担当者は、「社員のモチベーション向上」についての本を読んだ後、自部門でのミーティングの冒頭に「先週のグッドニュース共有」という小さな実験を始めました。最初は戸惑いもあったそうですが、続けるうちに部署の雰囲気が明るくなり、コミュニケーションも活発になったと言います。
そうです！わたしがしつこいくらい色々な人にお勧めしている「Good&New」のことなのです。
他には、私自身の経験もあります。
「フィードバックの与え方」について学んだ後、研修の場でいくつかの新しいアプローチを実験的に取り入れてみました。中には失敗したものもありましたが、それも含めて貴重な経験となりました。
実験のポイントは「小さく始めること」。
全社的な改革ではなく、まずは自分の担当範囲で、負担の少ない形で試してみるのが良いと思います。
小さいと、やってみよう！という気持ちを後押ししてくれます。
実験からの学び
実験から得られる学びは、どんな本よりも価値があります。なぜなら、それはあなたの現場に根ざした生きた知恵だからです。
あるベンチャー企業の経営者は、リーダーシップ書籍から学んだ「権限委譲」の考え方を実験的に取り入れました。最初は不安だったそうですが、結果として予想以上の成果が生まれ、「本に書かれていたことが本当だった」と実感したと同時に、「自社の委譲の仕方」というシステムの構築も得られたそうです。
学びのプロセスで大切なのは「ふりかえり」。
実験がうまくいったのか、いかなかったのか。
その理由は何か。
次に活かせるポイントは何か。
こうした振り返りを通じて、知識は本当の意味であなたのものになっていきます。
本を読むことは旅のようなものかもしれません。目的地（知識）に到達することはゴールではなく、その後の想像、実験、学びというプロセスこそが本当の価値を生み出します。次に本を手に取るとき、ぜひこの「知識→想像→実験→学び」のサイクルを意識してみてください。きっと、これまでとは違った読書体験が待っていると思います。
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ヒューレット・パッカード社の創業者が残した「人の成長なくして企業の成長はない」というメッセージは、その後リーマンショック等を経て事実上各社で証明され続けている実態があります。こうしたことからも、企業では社員を育成するための様々な研修を企画されていることと思います。
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