
部下の成長を阻む「過干渉」から抜け出すには
「つい口を出してしまう」あの瞬間
「ちょっと待って、その資料の書き方はこうじゃない?」
「その方法だと時間がかかるから、私のやり方でやってみて」
皆さん、こんな言葉、ついつい口にしてしまっていませんか?
私自身も何度も陥ってきた「マイクロマネジメント」の典型です。
なぜ、私たちは細かく口を出したくなるのでしょうか。
その背景には、「失敗させたくない」「早く成果を出したい」という責任感や焦りがあります。
また、「このやり方が一番効率的だ」という自信や、部下に任せることへの不安も影響しています。
ある管理職研修で、参加者のひとりがこう語ってくれました。
「平澤さん、私は自分が全部チェックしないと気が済まないんです。でも最近、部下から“信頼されていないと感じる”って言われてしまって…」と。
「信頼されていない」と受け取られるリスク

実はこの“善意のマネジメント”が、部下には「信頼されていない」「自分の力を疑われている」と伝わってしまうことが少なくありません。
「私は部下のためを思って言っているのに、なぜ伝わらないんだろう」
そんな思いを抱く方もいらっしゃるかもしれません。
でも、どんなに想いがこもっていても、相手にとっては“自分で考える機会を奪われた”という体験になることもあるのです。
ある営業部長は、部下の提案書を毎回細かくチェックし、赤ペンで修正していました。
「完璧なものを出してほしい」という応援のつもりだったそうです。
しかし半年後、その部下は「どうせ直されるなら、最初から工夫するのはやめよう」と思うようになり、徐々に提案の質も意欲も低下してしまったといいます。
みっちり書き込まれた赤ぺんに大きなショックも受けたようでした。
部下の成熟度に応じて関わり方を変える

では、どうすればマイクロマネジメントから脱却できるのでしょうか。
ヒントになるのが「状況対応型リーダーシップ」という考え方です。
部下の成熟度(=スキルと意欲のバランス)に応じて、関わり方を調整していくことがポイントです。
たとえば、経験が浅い新人には具体的な指示が必要です。
一方、ある程度経験を積んだメンバーには、方向性だけを示して「やり方」は任せてみる。
そして、さらに成熟した部下には「何をやるか」から委ねる。
関わり方を変えることで、部下の中に眠っていた力が引き出される。
これは、どの職場でも起こり得る変化です。
指導の目的は「いなくても回る」組織づくり

最後に、大切なことを。
指導をする目的は、部下の“失敗を防ぐ”ことではなく、“成長を支える”ことです。
最終的には「自分がいなくても組織が回る」状態を目指すことなのです。
過干渉は、部下が「失敗から学ぶ機会」を奪ってしまうことにもなりかねません。
時には見守る勇気も必要です。
私が担当したあるコーチング事例では、部長職の方が「部下を信頼して任せる」ことを3ヶ月間実践しました。最初は不安で落ち着かずイライラしたご様子ですが、徐々に部下たちの創意工夫が花開き、結果的に予想以上の成果が生まれました。
「チームの力が引き出された」と、その方は話してくれました。
マイクロマネジメントから一歩引くことで、自分自身の時間にもゆとりが生まれ、より戦略的な仕事に集中する余裕も持てるようになります。
まずは今日から、「口を出すのを少し我慢してみる」練習をしてみませんか?
きっと、あなたのチームにも新しい変化が訪れるはずです。
