
「考える前に動く」は、ビジネスではリスクになることも
「とりあえずやってみよう」「走りながら考えよう」。
そんな前向きな掛け声、耳にしたことはありませんか?
たしかに、行動力が求められる場面では勢いも大切ですし、慎重すぎて一歩も踏み出せないというのも困りものです。
でも、ビジネスの現場では、勢いだけで突っ込むと、意図しない混乱を招くこともあります。
「なんとかなる」と思って動いたけれど、終わってみたら想像以上に迷惑をかけていた。そんな苦い経験、思い当たる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
行動力と準備は、両立できます。
考えない行動は「直感」ではなく、単なる「無計画」になってしまうこともあるのです。
目的・計画がないと、判断がブレてチームも迷子に
目的や計画があると、判断に迷ったときの“軸”になります。
逆に、それがないと、チーム内で「これでいいの?」「誰が何をやるの?」といったズレや不安がじわじわと広がっていきます。
たとえば、何かの企画を進めるとき。
目的が「売上アップ」なのか、「認知度向上」なのかで、やるべきことは大きく変わります。でも、その目的が曖昧なままスタートしてしまうと、「いいと思ってやったのに、そんなつもりじゃなかった」とすれ違いが起きがちです。
チームで進める仕事ほど、「なぜそれをやるのか」「何を目指しているのか」を共有することが、一番の効率化につながります。
それがないと、一生懸命やっているのに報われない感覚が広がってしまい、チームの士気にも影響を及ぼしかねません。
怖い話
これは、私自身が見聞きした中でも印象に残っている2つの事例です。
事例1「急いで資料を作ったら、大事な数字がごっそり抜けていた話」
ある営業チーム
重要なプレゼンの直前、「急いで資料を作らなきゃ」と部下がひと晩で仕上げたスライド。見た目は美しく整っていましたが、肝心の数字が古いもののままになっていたのです。
「やばい、そこ最新のデータじゃないよ」と上司が気づいたのは、発表の直前。大急ぎで差し替えたものの、冷や汗ものでした。
事例2「“どうにかなる”では回らなかったイベント当日のバタバタ」
もうひとつは、地域イベントの運営チーム。
「細かいことは当日やりながら対応しよう」と決めたはいいものの、当日になって音響担当が来ない、受付に名簿がない、参加者の案内が伝わっていない…。
結局スタッフ同士で怒鳴り合いになってしまったという話もあります。
どちらのケースにも共通していたのは、「なんとかなるだろう」という希望的観測に頼りすぎていたこと。
準備不足のツケはちゃんと返ってくる、が教訓でした。
勢いよりも、「準備して動く」方が結局早い
行き当たりばったりで始めたことって、たしかに“動き出し”は早いかもしれません。
でもそのあと、手戻りや修正、すれ違いの修復に時間がかかることが多いのも事実。
「計画に時間をかけすぎると、機を逃すのでは?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、ちょっと立ち止まって方向を確認する時間が、のちの時短になります。
特にチームで動く場面では、「誰が」「何を」「どこまでやるか」を明確にするだけでも、無駄な確認やモヤモヤが減っていきます。
だからこそ、「準備して動く」ことは、慎重派のための策ではなく、スムーズに進めるための“最短ルート”です。
私は、「考えるより先に動く」傾向を持っていました。
今も、自然体でいると、基本その傾向が顕著です。
ただ、幾度も「それではうまくいかない」という経験を積んできて、今は、考える力と動く力を、バランスよく持つことが仕事の信頼を築く鍵だと考えています。
「自分は結構、行き当たりばったりだったかも…」と思う方には、準備をすること自体を面倒と感じる方も多いようです。そこを「いや待てよ」と立ち止まってみて、ほんの少しの“準備のひと手間”を加えてみることをお勧めしたいです。
それが、未来の自分と所属するチームを救うことにつながるかもしれません。
