
感情的になっている部下を前にすると、リーダーとしてどう接すればいいのか迷うことがあります。特に、部下がイライラしたり、納得できない様子を見せているとき、ただ「落ち着いて」と言っても、なかなか落ち着いてはくれません。ここで大切なのは、感情の奥には必ず「理由」があるという視点を持つことです。
納得できないとき、人はまず感情が大きく動きます。
モヤモヤ、不安、怒り…。
そのあとに「なぜこんな気持ちになるのか?」と理由を探し始めます。
そして、理由が理解できたり、自分なりに意味が見いだせると、ようやく感情が落ち着くのです。つまり、感情→思考→感情の循環が起きています。
ここでリーダーにできることは、部下の感情をいきなり変えようとするのではなく、思考を整理する手助けをすることです。たとえば、部下が「納得できません!」と言ったとき、「何が一番ひっかかっているの?」と問いかけてみる。すると、ただ怒っているように見えた部下が、「自分だけ負担が大きい気がするんです」とか、「判断の理由が聞けていないので不安です」といった、具体的な思考レベルの言葉を返してくれることがあります。
感情の渦中にいると、本人は「怒り」や「不満」という大きな塊しか感じられません
そこで、リーダーが言葉を丁寧に引き出すことで、その感情がどこから生まれているのかが見えてきます。理由が見えれば、部下自身も「ああ、こういうことが気になっていたんだ」と気づき、少しずつ冷静さを取り戻せるのです。
感情の否定をしない
ここで意識したいのは、感情の否定をしないこと。
たとえば「そんなに怒ることじゃないよ」と言われると、部下は「理解されなかった」と感じて、かえって感情が強まります。
まずは、「そう感じるのも無理はないよね」と受け止める。
受け止めたうえで、「じゃあ、どういう状態なら納得できる?」と未来に目を向ける問いを投げかけるのがおすすめです。
こんなことがありました。
私が以前関わった現場で、プロジェクトの進め方に不満を持つメンバーがいました。彼は反発の声を荒らげました。
しかし、よく話を聞くと、「自分だけ情報が後から伝わることが多く、チームの輪に入れていない気がする」とのこと。表面的には怒りでも、その奥には「置いていかれている不安」があったようです。このとき、怒りそのものを抑え込むのではなく、何が不安だったのかを一緒に言語化したことで、彼は最終的に「じゃあ、こういう情報共有の仕組みにしましょう」と建設的な提案をしてくれました。
感情的になっている部下に対して、リーダーができることは「理由を一緒に探すこと」と「意味づけを助けること」です。
理由が理解できると、人は自然に落ち着きを取り戻します。
納得とは、相手を完全に同意させることではなく、「なるほど、そういう背景ならそうなるのか」と意味が合致することだからです。
リーダーとして、感情を静めるのではなく、思考を整理するサポートをする。
これが、部下の納得を引き出し、結果的にチームの信頼関係を深める第一歩になるのではないでしょうか。
ここで質問です。
・あなたの部下が最近、納得できずに感情的になった場面はどんな状況でしたか?
・その場面にこの方法を当てはめると、どんな言葉がけができそうでしょうか?
今回は、感情的になっている部下にどう接すれば良いか?をテーマに書いてみました。
