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イライラを“センサー”に変えるEQの知恵(4)

「部分価値」と「充分価値」──感情と行動の一致が心を自由にする

イライラの奥にあるもの

これまでのコラムでは、イライラをセンサーとして捉えることで、自分の境界線を守る方法を考えてきました。

ただ、ここで一歩立ち止まってみると、「なぜ私はこんなにカチンと来るのだろう?」という問いが浮かびます。

ここで、感情の揺れの観点以外に、

 「自分が大事にしている価値観」と「実際の行動」の間のズレ、という観点からも私のケースを考察してみようと思います。

このズレを理解するために役立つのが、

「部分価値」と「充分価値」 という概念です。

部分価値と充分価値とは?

1. 部分価値

  • 自分が大事にしている考え方や価値ではある
  • しかし、その価値と実際の行動が一致していない
  • そのためストレスや不満を生みやすい

例:

「チームメンバーの時間を尊重したい」と思っているのに、相手の押しに負けて自分の意図を曲げてしまう。結果、「本当は大事にしたいことが守れなかった」という違和感が残る。

2. 充分価値

  • 自分が大事にしている価値観と行動が一致している
  • 自分の内面と外側の行動が揃っているので、自由で落ち着いた気持ちでいられる

例:

「チームメンバーの時間を尊重する」という考えを持ち、そのために微妙な10分をずらして予定を調整する。そして相手からの反論があっても「私はこの理由でこの時間を選びました」と伝えられる。

このとき心は納得しており、自由で軽やかな感覚がある。

部分価値がストレスを生む理由

人がストレスを強く感じるのは、外からの刺激そのものよりも「自分の価値と行動がズレているとき」です。

「本当はこうしたいのに、できなかった」

「大切に思っていることを軽んじてしまった」

こうしたズレが積み重なると、心の中に不協和音が鳴り響きます。

この状態が部分価値であり、イライラや自己嫌悪の原因になるのです。

充分価値で生きると自由になれる理由

一方で、自分の価値と行動が一致しているとき、人はとても自由で穏やかな気持ちになれます。

「大切にしたいことを行動で守れた」

「自分らしい選択をした」

そう実感できるとき、他人にどう評価されても揺らぎません。

これは「充分価値」の状態です。

充分価値で生きることは、必ずしも「いつも正しい選択をする」ことではありません。

むしろ「自分に正直に選んだ」と思えることが心の自由につながるのです。

職場や日常での実践法

では、どうすれば部分価値から充分価値へと近づけるのでしょうか。

  • 自分の価値を言葉にする
    「私は相手の時間を尊重したい」「私は自分の意見を大事にしたい」など、価値観を具体的に書き出す。
  • ズレに気づく
    「本当はこうしたかったのに」と感じた瞬間があれば、それは部分価値のサイン。気づくだけで一歩前進。
  • 小さな一致を試す
    全部を変える必要はありません。たとえば「今回は自分の調整を守ってみる」と小さな一致から始める。
  • 結果ではなく選択を評価する
    相手に受け入れられたかどうかより、「私は大事にしていることを選んだか」で自分を評価する。

部分から充分へ

部分価値は、人にとって自然な状態です。誰しも、価値と行動がずれることはあります。

大切なのは、そのズレに気づいたときに「じゃあ、次はどう整えようか」と考えること。

充分価値でいられる時間が少しずつ増えていけば、心はもっと自由になり、イライラもストレスもぐっと減っていきます。

感情をセンサーとして活かしながら、自分の価値と行動を一致させていく・・・。

これこそが、EQを日常で実践するうえでの鍵だと、私は感じています。

この記事を書いた人

marco

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