体験学習が思ったほど機能しない
体験学習が思ったほど機能しないのは何故か
研修の場で体験型のワークを実施すると、場がいきいきして、学びも深まりそうな気がします。でも実際には、「その時は盛り上がったのに職場で生かされない」「思ったより効果が見えなかった」という声も少なからず耳にします。
わたしの中に芽生えた疑問
体験学習がうまくいかない現場を見るたびに、「これは何が起きているんだろう」と不思議に思うことがあります。ふりかえってみると、その背景には“人の思考の癖”が静かに影響している要因のひとつではないか?と考えるようになりました。
例えば、結論を急ぎすぎる癖や、プロセスを見る前に「正しいやり方」を探したくなる癖などです。
こうした癖が働くことで、せっかくの体験が「ただの作業」になってしまう場面もありました。
ここからは、私が出会った二つの印象的な例をもとに、学びが止まってしまう瞬間と、逆に深まった瞬間をたどってみたいと思います。
※この仮説が、唯一無二ではなく、
「仮説である」
「要因のひとつだと感じた」
という前提でお読みください。
「最悪の展開」を招いた体験学習の裏側:どこで学びが止まったのか
あるワークの最中、一つのチームだけが少しずつ混乱に向かっていく場面がありました。
話がかみ合わず、意見も出づらくなり、最後には「もう早く終わらせよう」という空気が漂ってしまいました。
後でメンバーと話すと、思いのほかシンプルな理由が浮かび上がりました。
「正解は何ですか?それを先に知りたかった」
「失敗したくないと思って、どうしても急いでしまった」
この“急ぐ癖”が、話し合いの途中にある大事なサインを見逃し、結果として、学びが進む前に場が閉じてしまったようでした。
私自身も「あぁ、ここで止まったんだな…」とじんわり理解したことを覚えています。
学びとは、ス「いま、何が起きているか」を見つめる眼差しの方にこそ宿るのだと、この時あらためて実感しました。
「最高の成果」が生まれた瞬間:体験学習が本来の力を発揮した理由
一方、同じワークでも、別のチームはとても落ち着いた雰囲気で進んでいました。特別なスキルがあるわけではありません。むしろ控えめな方が多いチームでした。
ただ、途中でこんな場面がありました。
「ん?なんだか意見がまとまりにくくなってきましたね」
この一言がきっかけで、みんなが「確かに」「じゃあ一度整理してみます?」と自然に対話が開いていきました。その後のふりかえりでは、核心をついていて、聞いていた私まで「うんうん」とうなずいてしまったほどです。
特別な“技”があったわけではなく、ただ一度立ち止まっただけ。
それだけで、体験学習は本来の力を発揮していました。
プロセスをそっと眺めようとする姿勢が、学びを豊かにした瞬間だったように感じています。
体験学習を成功に導くために押さえたい本質
二つの場面を比べてみると、体験学習のポイントは「正解を探す」ことでも「すごい発言をする」ことでもなく、“立ち止まる余白”を持てるかどうかかな、と思いました。
人は仕事になると、
「早く答案を出したい」
「間違えたくない」
「うまくやらなければ」
という癖が自然と働くことがあります。
その癖を評価したいのではなく、
「学びの入り口を狭めてしまった事例」の要因の一つかもしれない、と思ったということです。
管理者や人事担当の方からすると、研修というのは投資です。
だからこそ「どうすれば学びが続くのか」という視点も大事になると思っています。
体験学習の本質は、“経験そのもの”ではなく、“経験をどのように観るか”の方に宿るように思います。
ほんの少し余白ができるだけで、参加者の気づきが伸びていき、仕事での行動継続にもつながりやすくなります。
実際、わたしも“余白の力”に何度か助けられました。
強烈!余白の力!
と言ったところでしょうか。








