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「圧力P」と「計画P」

PM理論の深層① リーダーシップの勘違い

前回は、私が熱心な議論のつもりで、実は相手の人格を攻撃する「口頭攻撃」を行っていたというお話をしました。 では、なぜそんなすれ違いが起きたのでしょうか?

私は決して、相手を不快な気持ちにさせようとしていたわけではありません。むしろ、積極的に学んでいる姿勢を見せていたつもりでした。

今回は、三隅二不二氏のPM理論をさらに深掘りし、私のリーダーシップがなぜ機能不全に陥ったのかを、科学的なデータに基づいて解剖します。

関連内容→https://0comb.com/2026/01/07/kaiteitekekkoutsurai/

P機能は一枚岩ではない:「計画P」と「圧力P」

少し前にも書いたように、
PM理論(三隅)において、P機能は「目標を達成する力」と定義されますが、実はその中身は大きく2つの性質に分けられることをご存知でしょうか? 小久保みどり氏の研究(2002)によれば、三隅が提唱したP行動の2分類を、小久保(2002)は、さらに研究をされています。

計画P行動(Planning P): 職務遂行のために部下を指導したり、計画を立案したり、リーダー自身の専門的な有能さを示したりする行動。「導く力」。
圧力P行動(Pressure P): 規則を守らせる、叱責する、成果を上げるよう強く迫るなど、部下に心理的な負担をかける行動。「強制する力」。

あの日、録画の中の私は、間違いなく「計画P」を発揮しているつもりでした。 「この理論の前提はこうですよね?であれば、〜〜はどう捉えれば良いですか?」など、議論を高いレベルでしていたつもりでした。

しかし、結果は・・・。
第三者(後でも直したわたし)は、録画の私の発言のたびに嫌な感情が起きました。
観ていたわたしは、録画の中の私のアプローチを「相手にとって単なる「圧力(圧力P)」だったのでは」と疑念を持ったのです。

M機能なきPは「外部からの強制」になる

なぜ「導き」が「圧力」に変わってしまったのか。
その鍵を握るのがM機能(集団維持・配慮)。

三隅二不二氏は、M機能とP機能の相互作用について、非常に重要な指摘をしています。
「M機能(配慮)が不足している状態でP行動を強めると、それは相手にとって『外部からの強制的な圧力』と受け取られる」

当時の私は、相手への共感や場の空気への配慮(M機能)を完全に欠いていました。
自分のエゴしか見ていなかったのではないでしょうか。
その状態で繰り出される正論や論理的指摘は、相手にとっては受け取りにくい対象だったように思います。
私は「計画P」のつもりで、実際には質の悪い「圧力P」をしていたようです。

データが突きつける「逆効果」の真実

さらに残酷な事実があります。
今回のワークショップの参加者は、コーチ歴25年以上のベテランや、成人発達理論の専門家たちでした。いわば、組織でいう「部長や課長クラス以上」の熟練したプロフェッショナルたちです。

小久保氏の研究データは、こうした熟練者に対する「圧力P」の無意味さを如実に示しています。 この研究では、一般社員と課長職の双方に対してリーダーシップの影響を調査していますが、その結果は衝撃的でした。

一般社員に対して: 課題が不確実な場合、P行動(指示・指導)はある程度モチベーション向上に寄与する可能性がある。
課長職(熟練者)に対して: 指示的なP行動とモチベーションの間には、有意な正の相関が見られない。むしろ、圧力P行動はモチベーションに対し**負の影響(やる気を削ぐ)**を与える傾向がある,。

つまり、ある程度自分の流儀や専門性を持っている相手に対して、細かく論理を振りかざして指導しようとする行為(P行動)は、「釈迦に説法」であるばかりか、「百害あって一利なし」なのです。

あの場で必要だったのは、互いの専門性を尊重し、任せ、支え合う「M機能(信頼・支持)」だったのでは・・・。いや、そうに違いない、と。

「正しさ」「正義」

「自分は正しいことを言っているのだから、相手も納得するはずだ」
この思い込みは怖い。
「思い込み」だから、違和感なくしてしまっているので、なおさら怖い。
それは、私が陥っていた罠だったのでは。

M機能という土台がない場所で振りかざすP機能は、不毛・・・。
録画の中の私が「理屈っぽい」と映ったのは、相手をリスペクトせず、自分の正しさを示すばかりの「圧力P」。

質問より、耳を傾けること。
そう、「M機能」が、この行き詰まりを打破する鍵のように思えます。

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marco

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