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大人の学びは「アンラーン」から始まる

「私は知っている。だから、あなたの話はここまで理解できる」
「私の25年の経験に照らし合わせると、その理論は少し違うのではないか」

前回、私は自分が「批判的思考」のふりをして、単に「有能さを示すパフォーマンス」をしていたことを告白しました。 なぜ、ストレートにに「教えてください」と言わず、知っていることを伝えた上で質問をしたのか。
その元凶は、皮肉なことに私が最も誇りに思っていた「25年のキャリア」そのものではないでしょうか。

今回は、大人が新しいことを学ぶ際に必ずぶつかる壁、「アンラーン(学習棄却)」の難しさについてお話しします。

「知識」が「邪魔」になる瞬間

私たちは通常、知識や経験は積み上げていくもの(ストック)だと考えています。
経験が増えれば増えるほど、能力は高まり、より良い判断ができるようになると。
確かに、同じ分野で戦い続けるなら、経験は強力な武器です。

しかし、今回のように「新しい理論(成人発達理論)」や「新しい環境」に飛び込んだ時、その武器は突然、重たい足枷に変わります。

録画の中の私が連発していた「私は知っている」という枕詞。
これは、新しい情報を「過去の自分のフレームワーク」に無理やり当てはめて処理しようとする抵抗の表れでした。 「Aという新知識」を、ありのまま「A」として受け取らず、「私が知っているBに似ているから、つまりBのことね」と勝手に変換してしまう。これでは、いつまで経っても新しい「A」は身につきません。

学ぶことよりも難しい「捨てる」こと

人材開発の領域には、「アンラーン(Unlearn:学習棄却)」という言葉があります。これは、単に「学んだことを忘れる」という意味ではありません。「環境の変化に応じて、古くなった知識や思考の癖、成功体験を意識的に捨て去り、新しいスタイルに入れ替えること」を指します。

今の私に必要なのは、新しい知識を「ラーン(学習)」すること以前に、この「アンラーン」でした。

• 「先生役」として振る舞う癖を捨てる。
• 「すぐに答えを出そうとする」習慣を捨てる。
• 「自分はベテランだ」というプライドを捨てる。
コップの水が満杯の状態では、新しい水を注ぐことはできません。
私は25年かけてコップを満たし、その満杯のコップを誇示するためにワークショップに参加していたのです。これでは、一滴も新しい学びが入ってくるはずがありません。

とはいえ、捨てようという努力は幾度となくしました。
言葉や行動を変えました。
しかし、信念までをも変えることはできなかったのです。

鎧を脱ぐ恐怖

頭では分かっています。
しかし、実践するのは想像以上に抵抗が生じます。
そんなことは許されないのです(そんなことってのは、無知であるっていうこと。事実なのに!)

25年のキャリアという「鎧」を脱いでしまったら、何者でもなくなってしまうのではないか?
これまで築き上げてきたアイデンティティが、崩れてしまうのではないか?

第12回で触れた「優秀に見せたい」というパフォーマンスは、この恐怖から自分を守るための防衛本能でした。 しかし、アンラーンとは、その恐怖を受け入れ、自ら鎧を脱ぎ捨てて「無防備な学習者」に戻る勇気のことなのです。

本当に、わたしにとっては一苦労もふた苦労も必要なことなのです。

「素人」になる才能

世阿弥は『風姿花伝』の中で「初心忘るべからず」と説きましたが、現代の私たち風に言えば「いつでも素人(ノービス)に戻れる力が、達人の条件である」と言えるかもしれません。

「私は何も知らない」 ソクラテスの「無知の知」のように、一度自分の経験を脇に置き、真っ白な状態で目の前の事象に向き合う。
あの録画の中で私が必死に守ろうとしていた「ちっぽけなプライド」が、いかに学びを阻害していたか。第三者の目で、痛いほど分かりました。

次回は、この「プライド」の正体について、社会心理学の視点からさらに深く切り込みます。
なぜ私たちは、これほどまでに「すごく見せたい」という病に侵されてしまうのでしょうか。

っていうか、なぜわたしは、って話ですが^^;

この記事を書いた人

marco

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