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WBSをチームの共通言語にする

「仕事の見え方」をそろえるマネジメント

前回のコラムでは、部下がWBSを書けるようになるための支援についてお話ししました。

管理者がWBSを理解する。
そして、部下もWBSを書けるようになる。

ここまで来ると、チームの仕事の進め方はかなり変わってきます。
しかし、もう一つ大事な段階があります。

それは、WBSをチームの共通言語にすることです。

実は、仕事がうまく進まなくなる原因の多くは、能力の問題というより、見ているものが違うことから生まれます。

同じプロジェクトに関わっているはずなのに、

ある人は
「まだ時間はある」と思っている。

別の人は
「かなり遅れている」と感じている。

さらに別の人は
「そもそもこの作業が必要なのか」と思っている。

こうしたズレは、意外と日常的に起きています。

会議の場では、皆が同じ話をしているように見えても、
頭の中で描いている仕事のイメージはバラバラ、ということも少なくありません。

WBSの価値は、ここにあります。

WBSは、単なる計画表ではなく、
仕事の全体像を共有するための地図になります。

たとえば、プロジェクトの初期段階でWBSをチーム全員で確認すると、

「この工程が抜けていませんか」
「この作業は誰が担当しますか」
「ここは時間がかかりそうですね」

といった会話が自然に生まれます。

つまり、仕事が始まる前に、
認識のすり合わせが起きるのです。

これはとても大きな意味があります。

多くのプロジェクトでは、問題が起きてから初めて
「そんな作業が必要だったのか」
「そこは自分の担当だと思っていなかった」
という話になります。

しかしWBSが共有されていると、
そうしたズレが早い段階で見えるようになります。

そしてもう一つ大きな変化があります。

それは、会話の質が変わることです。

たとえば、進捗報告の場面です。

WBSがないチームでは、報告はどうしても曖昧になります。

「順調です」
「少し遅れています」
「今調整しています」

こうした言葉は、聞いている側にとっては判断が難しいものです。

しかしWBSが共有されていると、報告はこう変わります。

「WBSのNo.4の工程が2日遅れています」
「No.6の作業で吸収できそうです」
「ここで追加作業が発生しそうです」

つまり、報告が感覚ではなく構造で行われるようになります。

これは、管理者にとっても大きな助けになります。

仕事の状況を把握するために、細かく聞き出す必要が減り、
チーム自身が状況を整理して共有できるようになるからです。

さらに、WBSが共通言語になると、
チームの中で自然と相互支援が生まれます。

あるメンバーが

「この工程が遅れそうです」

と言ったとき、

「ではこの部分は私が手伝えます」
「この作業なら先に進められます」

という話が出やすくなります。

なぜなら、仕事の構造が見えているからです。

逆に言えば、仕事がブラックボックス化していると、
助けようにも助けられません。

「何をしているのかよくわからない」
という状態では、周囲も動きようがないのです。

WBSは、そうしたブラックボックスを減らしてくれます。

ここで管理者にとって大切なのは、
WBSを「個人の作業表」にしないことです。

せっかく作ったWBSが、担当者の手元だけにある。
他のメンバーは見ていない。

これでは、チームの共通言語にはなりません。

できれば、

プロジェクトのキックオフ
進捗会議
中間レビュー

といった場面で、WBSを一緒に確認する時間を持つと良いでしょう。

そのとき、管理者が細かく説明する必要はありません。

「この工程の進み具合はどうでしょうか」
「ここで何か気になる点はありますか」

そんな問いを投げるだけでも、
チームは自然にWBSを見ながら話すようになります。

つまり、会話の中心にWBSを置くのです。

そうすると、チームの中に少しずつ
「仕事は構造で見るものだ」
という感覚が育っていきます。

ここまで来ると、WBSは単なるツールではなく、
チームの思考の枠組みになります。

そして実は、この状態になると、管理者の仕事はかなり楽になります。

なぜなら、管理者がすべてを把握しなくても、
チームが自分たちで仕事の状況を見える形にしてくれるからです。

管理とは、すべてを自分で抱えることではありません。
見える状態をつくることです。

WBSは、そのためのとてもシンプルで強力な方法です。

もしまだチームで共有する習慣がない場合は、
次の会議で一度だけでも、

「この仕事を、みんなで分解してみませんか」

と声をかけてみてください。

たった一度の経験でも、
仕事の見え方は大きく変わることがあります。

WBSをチームの共通言語にする。

それは、
「同じ仕事をしている人たちが、同じ地図を持つ」
ということなのかもしれません。

そして同じ地図を持つチームは、
迷いながら進むチームよりも、
ずっと落ち着いて前に進むことができるのです。

この記事を書いた人

marco

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