仕事を分解する力が、チームを前に進める
リーダーシップという言葉を聞くと、
「人を引っ張る力」や「強い発言力」を思い浮かべる方が多いかもしれません。
しかし現場でさまざまなチームを見ていると、
本当にチームを前に進めている人は、
少し違う力を持っているように感じます。
それは、
仕事を構造として見られる力です。
つまり、仕事を分解して捉える力です。
私はこれまで「仕事がうまく進まない」という場面に立ち会ってきました。
そのとき起きていることをよく見てみると、
能力の問題というよりも、
仕事の全体像が見えていないことが原因になっていることが少なくありません。
実際、私自身もその経験をしており、
仕事のしにくさ、やる気の停滞、何を学べばいいかわからない、職場での不信感、などに苛まれました。
何から手をつければいいのか分からない。
どこまで進んでいるのか分からない。
何がまだ決まっていないのか分からない。
こうした状態では、
人は動きに制限をかけてしまうのです。
そこで役に立つのが、WBS(Work Breakdown Structure)という考え方で
WBSは、仕事を小さな単位に分解し、
全体の構造を見える形にする方法です。
難しい言葉に聞こえるかもしれませんが、
やっていることはとてもシンプルです。
「この仕事が終わった状態とは何か」
「そこまでに必要な作業は何か」
それを順番に書き出していくだけです。
この作業をしてみると、
仕事の見え方が大きく変わります。
たとえば会議一つとっても、
・会議の目的を決める
・資料を準備する
・参加者に共有する
・議事録をまとめる
・決定事項をタスクにする
といった工程が見えてきます。
こうして仕事を分解してみると、
「何をすればいいのか」がはっきりしてきます。
そして実は、この作業にはもう一つ大きな意味があります。
それは、仕事の認識をそろえることです。
ここはかなり重要です。
これ以前ができているチームも、
これができていなくて、表面だけ、一部の人だけの、仕事になっているケースを私は経験しています。
実際、現場ではよく、こんなことが起こります。
管理者は
「資料を作っておいてください」と言う。
部下は
「資料を作りました」と提出する。
ところが管理者は
「まだ意思決定の材料になっていない」と感じている。
このとき問題なのは、
部下が動いていないことではありません。
仕事の終わりのイメージがそろっていないのです。
仕事を成果物単位まで分解すると、
何が完成すれば仕事が終わりなのかが見えるようになります。
これだけでも、
チームの仕事の進み方はかなり変わります。
さらに、部下が自分でWBSを書けるようになると、
チームの生産性は大きく上がります。
仕事を頼まれたときに、
「まず何から始めればいいか」
「どこが不確実なのか」
「どれくらい時間がかかるのか」
を自分で整理できるようになるからです。
これは、手戻りを最小にし、
仕事を自分でコントロールする感覚にもつながります。
極めて不毛とも言える「やる気を失う」事態を避けることもできるでしょう。
そして次の段階では、
WBSはチームの共通言語になります。
仕事を分解した構造をチームで共有しておくと、
「この工程が遅れています」
「次の作業に影響が出そうです」
「ここで調整できます」
といった会話が生まれます。
つまり、仕事の状況を
感覚ではなく構造で話せるようになるのです。
これはチームにとって、とても大きな変化です。
問題が起きたときも、
「誰が悪いのか」ではなく
「どこに課題があるのか」を話せるようになります。
また、仕事の構造が見えると、
属人化も減っていきます。
誰が何をしているのか、
どこまで進んでいるのかが共有されているため、
「ここなら私が手伝えます」
「この作業は引き継げます」
といった支援が自然に生まれます。
さらにWBSがあるチームでは、
経験が次の仕事に活かされます。
「前回はここで時間がかかりましたね」
「今回は最初からこの工程を入れておきましょう」
こうして、仕事の経験が
チームの知恵として蓄積されていくのです。
ここまで来ると、
仕事を分解できる人が自然とチームの中心になります。
なぜなら、その人がいると
仕事の見え方が整うからです。
「まずここから始めましょう」
「ここはまだ決まっていません」
「この工程が終われば次に進めます」
こうした言葉が出てくると、
チームの空気は落ち着きます。
人は、見えないものに不安を感じます。
しかし仕事が分解され、
構造として見えるようになると、
次の一歩が見えてきます。
つまり仕事を分解するということは、
人が動ける状態をつくることでもあるのです。
私は、リーダーシップとは
すべてを決めることではないと思っています。
むしろ、
チームが前に進める状態を整えること
ではないでしょうか。
そのために必要なのは、
仕事を俯瞰して見る視点です。
大きな仕事を整理する。
不確実な部分を見つける。
役割を明確にする。
こうしたことができる人は、
自然と周囲から頼られるようになります。
そして気がつくと、
チームの中心に立つようになります。
仕事を分解する力は、
派手なスキルではありません。
しかしそれは、
混乱した状況の中で道筋を見つける力です。
そしてその力こそが、
リーダーシップの土台になるのだと思います。
もしよろしければ、
明日からの仕事で一度試してみてください。
今抱えている仕事を、
少しだけ分解してみる。
そこから、チームの仕事の見え方が
少し変わり始めるかもしれません。
私自身の
生々しい経験と実感を込めて。
〜「分解思考によるリーダーシップ」〜(勝手に名前をつけてみました)








