
アクティブリスニングの脳科学的な可能性
例えば、
「ちゃんと話を聴いてもらえていない」と感じた経験、ありませんか?
先日、ある企業の管理職研修で、こんなコメントをいただきました。
「部下との1on1で、ちゃんと聴いているつもりなのに、なぜか部下の表情が曇ってしまうんです」
・・・実はこれ、私自身もコーチになりたての頃に直面した課題です。
思考のクセ

人の脳には“思考のクセ”があります。
誰かの話を聴いているつもりでも、ふと「次は何を話そう?」「どう答えよう?」と、自分の頭の中で会話が始まってしまう。そして気づけば、相手の言葉の半分も入ってこないこともしばしば。これは決して怠慢ではなく、脳の自然な働きなのです。
脳科学の分野では、私たちが何もしていないときに活動する「デフォルト・モード・ネットワーク」という状態が知られています。これは、無意識のうちに“自分のこと”を考える脳のモード。つまり、何も意識しなければ、人は「相手の話」よりも「自分の思考」に意識が向きやすいというわけです。
私自身もかつて、ある重要なプロジェクトの会議中、メンバーの提案を途中で遮って自分のアイデアを優先してしまったことがありました。後から話を最後まで聴いてない、気づいてはっ😱としたのを覚えています。
「聴いているつもり」が、実は「聴けていなかった」
そんな現実に、気づいたのです。
アクティブリスニング

それからわたしは、特に意識し始め明日。
脳科学の知見を取り入れたアクティブリスニングです。
実践してきたポイントは、大きく三つあります。
一つ目は、
「脳内のジャッジをお休みさせる」こと。
相手の話を評価せず、そのまま受け取る時間を意識的に作ります。
二つ目は、
「好奇心モードへの切り替え」。
自分の中で答えを探すのではなく、「相手から学ぼう」というスタンスで耳を傾けます。
三つ目は、
「共感の回路を目覚めさせる」こと。
相手の声のトーンや表情の変化に意識を向けながら、感情の動きに寄り添っていきます。
このような姿勢で聴くと、脳内では「ミラーニューロン」と呼ばれる神経細胞が活性化します。
これは、相手の気持ちや行動を“自分のことのように感じる”しくみを担っており、まさに共感の基盤といえるものです。
実際、アクティブリスニングを取り入れたあるマネージャーの方からは、「1on1で、部下が自分から話すようになった」という嬉しい報告もありました。人の脳は「本当に聴いてもらえている」と感じると、信頼や安心に関わるホルモン――オキシトシンが分泌され、関係性に深みが出るのです。
この実践を続けるうちに、私自身もただ「聴く」スキルが上がっただけでなく、思考のクセそのものが少しずつ変わっていきました。以前は「何か答えを出さなきゃ」と焦ることも多かったのですが、今では「相手の中に答えがある」という信念を持って、穏やかに聴けるようになりました。
もし今、あなたの職場の一日を振り返ってみたとき、「真に聴く時間」はどれくらいあったでしょうか?
脳のクセに気づき、それに対して少しずつ意識を向けていく。それは、リーダーとしての在り方を大きく変え、チームの心理的安全性を高める確かな一歩になると思います。
まずは一日一度、ほんの数分でもOK!
「評価せず、ただ聴く」時間を持ってみてください。
きっと、脳の回路が少しずつ変わり始め、対話の質そのものが変わっていくのを実感できると思います。
