
「“ありがとう”って、そんなに特別な言葉ですか?」
と、ある管理職の方から聞かれたことがあります。
たしかに、挨拶のように日常で使われる言葉かもしれません。
でも、「上司からのありがとう」となると、どうでしょう。
部下にとっては、そのひと言が思いのほか、心に残るものになることがあるのです。
「頑張ってくれて、ありがとう」「引き受けてくれて助かったよ」・・・
こうした言葉をきちんと“伝えている”上司は、部下との信頼関係を地道に積み上げてい積み上げているように思えます。これは、特別なテクニックではありません。けれど、だからこそ、毎日の中で自然にできているかどうかが問われます。
「“思っているだけ”では、伝わらない」

「ちゃんと感謝してますよ。言ってませんけど。」
これも、よく耳にする言葉です。
おそらく本心からそう思っていらっしゃる。
でも、感謝は「心で思っている」だけでは伝わらないものです。
コミュニケーションは、「発信」があってはじめて「受信」される仕組みです。
どんなに良い気持ちでも、言葉にしないと相手には届かない、
当たり前のようで、つい忘れてしまいがちなことではないでしょうか。
特に忙しい時期には、上司自身も気持ちに余裕がなく、感謝や労いを言葉にするタイミングを逃してしまうこともあるかもしれません。
でもその時こそ、部下にとっては声をかけられたら嬉しい瞬間だったりします。
伝えそびれる前に、一言添えてみる。
そんな意識が、関係性にあたたかさをもたらすように感じています。
上司の「ふとした一言が、部下である私の原動力になったあの日の話」

これは、私がまだ若手の頃の話です。
資料づくりに追われていたときのこと。
作成した内容を上司に提出したところ、ひと目見て「いいじゃない、この構成。これなら伝わるね」と言ってくださったのです。
たったそれだけのひと言。
でも、それがどれほど励みになったか。
本当に嬉しかったです。今でもよく覚えています。
そのとき、「あ、自分の仕事って、ちゃんと見てもらえてるんだ」と感じたのです。
指導や修正ももちろんありがたいのですが、
成果や工夫を認めてもらえる瞬間は、何よりのエネルギーになります。
それ以降、その上司の頼まれごとは断れなくなりました(笑)。
信頼関係って、そんなふうに築かれていくものなのかもしれません。
「思いを伝える」

部下のやる気を引き出すのは、報酬や制度だけではありません。
日々の小さな「声かけ」や「ひと言」が、大きな意味を持つこともあるのです。
「忙しい中ありがとうね」「あの進め方、よかったと思うよ」
こうした言葉が、部下にとっては「見てもらえている」「自分は役に立てている」
という実感につながると思います。
そして、その実感が、「また頑張ってみようかな」と行動の継続につながっていきます。
感謝は、心で思うだけではなく、伝えてこそ意味がある。私はそう考えています。
伝えるリーダーこそが、伝わるチームをつくる。
今日この瞬間も、伝えるチャンスがあるかもしれません。
