
決断ができない理由とは?
仕事の現場で「どうしようかな…」「まだ決めきれないな」と足踏みしてしまう場があります。たとえば、部下の昇進を推薦するかどうか、プロジェクトの方向性を変えるかどうか、予算を投資するかどうか…。頭の中でグルグルと考え続けるのに、なぜか結論が出ない。
私も、研修プログラムを提案する際に「この構成で本当に大丈夫だろうか」と迷い続けた経験があります。迷う自分を責めたくなりますが、決断ができない理由の多くは「性格の問題」ではなく、状況がまだ“決断できる状態に整っていない”ことが多いようです。
具体的には、判断に必要な情報が十分ではなかったり、情報があいまいだったりすることが大きな要因です。だからこそ、慎重にならざるを得ない。逆に、決断がスムーズにできるときは、周囲の状況がクリアで、比較材料や根拠が手元に揃っている場合がほとんどです。
「決められない=優柔不断」ではなく、「決められない=情報が不足している」ことが多いと気づくと、すべきことが見えてきます。
行動を妨げる情報の欠如
たとえば、新しいツールの導入を検討するとします。でも、そのツールの具体的な機能や費用対効果がはっきりしていなければ、決断しづらい…。「他社ではうまく使えているのか?」「本当に現場が喜ぶのか?」と疑問が残ったままでは、リスクが見えないので動けなくなるのは自然なことです。
自分の経験をふりかえって思い出すことがあります。
研修を提案した企業から「この内容で本当に成果が出るのか、他社の事例はありますか?」と聞かれたとき、こちらが十分な情報を提示できませんでした。だから、企業側も決断できませんでした。やはり情報がなければ動けないのだと改めて感じました。
行動が止まる背景には、決して“やる気がない”わけではなく「根拠となる情報が足りないだけ」のケースがとても多く見受けられます。
そして、管理者や経営者の立場では、その情報を集める責任が自分に回ってくることが多いため、より重い判断を迫られます。
情報収集の重要性
では、どうすればよいのでしょうか。
大切なのは「情報を取りにいく」という姿勢です。決断に必要な情報が不足していると感じたら、まずはどんな情報が欠けているのかを整理してみる。
たとえば、部下の異動を検討しているなら、本人の意向やキャリアプラン、異動先の状況、チームへの影響など、必要な要素を洗い出してみることが大切です。こうした情報が揃うと、判断の迷いが減っていきます。
情報収集は面倒に感じるかもしれませんが、実は決断までの時間を短くし、無駄な迷いを減らす近道でもあります。
時に、情報を遮断している存在があることに戸惑いを感じることもありますが、情報は集めようとしなければ集まらないことは、間違いないなと経験を通して感じます。
情報を持つことの力
情報があるかないかで、行動のスピードも自信の度合いも大きく変わります。情報を持っていると、周囲を説得するときも根拠を示せるので、結果としてチーム全体が動きやすくなります。
逆に、情報がないまま動くと「やっぱり違った」と後戻りが発生し、余計に時間とエネルギーを消耗することになります。これは経験上、何度も痛感してきました。
管理者や経営者は日々、多くの判断を求められます。
そのとき、自分が確信を持って動けるようにするためには、情報が整っていることが何よりの支えになります。情報は、迷いを減らすための“安心材料”でもあると思います。
もし今、何かを決められずにいるとしたら、性格や意志の強弱にその要因を求めるのではなく、「何が不足しているのか」を一度棚卸ししてみるとよいかもしれません。
必要な情報が見えてくると、不思議と行動へのエネルギーが湧いてきます。
「決められない」「動けない」の奥には、情報が足りていないだけのことが多い。
ならば自ずと、どうすれば良いか、が見えてくるのではないでしょうか。
