
答えは足元にある
「業務改善」と聞くと、立派な成功事例集や有名企業の取り組みを参考に…と思いがちです。
もちろん参考にはなりますが、それをそのまま自分たちの職場に当てはめても、必ずしも同じ結果にはなりません。
なぜなら、現場の状況も人も文化も、企業によってまるで違うからです。
本当に役立つヒントは、いま目の前で起きている出来事や、自分たちが抱えている小さなモヤモヤの中に潜んでいます。
業務改善の本当の意味
業務改善とは、単なる「効率化のための整理整頓」ではありません。
目的は、より良い成果を出すために、仕組みや動きを変えることです。
そのためには、
- 現状を丁寧に観察する
- 無駄や停滞の原因を見つける
- 新しい仮説を立てる
- 小さく試す
- 振り返って修正する
このサイクルを続けることが欠かせません。
このプロセスは、PDCAサイクルにも似ていますが、より現場感覚に寄り添った“呼吸をするような改善”に重点を置いています。
「過去の成功事例」より「今の観察」
過去の事例は地図のようなもの。方向感は示してくれますが、道そのものは現場で探さなければなりません。
たとえば、別の企業が「承認フローを一本化して作業時間を30%短縮した」と聞けば参考になりますが、あなたの職場では別のボトルネックがあるかもしれません。過去の成功事例も同じです。当時はうまくいっていたことを踏襲すること自体がボトルネックの存在になっているかもしれません。
そこで大事なのは、「なぜこのようなことが起こったのか」の原理を理解し、自分たちの現状に合わせてアレンジすることです。
現場観察から始める改善のステップ
- 現状観察
今置かれている現状をピックアップします。
例えば、業務フローを可視化することも、同様です。 - 分析
なぜこのようなことが起こったのか?を考えます。
例えば、〜〜で時間や労力が不必要に使われている、など。現状を形成している理由があるはずです。その理由を考えていきます。 - 新しい仮説を立てる
「この業務はまとめられるのでは?」「この承認は本当に必要?」など、これからの活動に向けての具体的な改善案を考えます。
「こういうことが考えられる」を探していくのです。 - 小さく試す
一度に大改革をすると現場が混乱します。まずは一部部署や短期間でテストします。 - 振り返りと修正
1から繰り返していきます。
このサイクルの中に「失敗」や「成功」という概念がないこともお分かりいただけるでしょう。全ては、体験を経験に変える、その繰り返しです。
実験的アプローチのすすめ
変化のスピードが早い今の時代、改善は「実験」と捉えて進める方がうまくいきます。
小さく始めればリスクも少なく、「やってみたら意外と簡単だった!」という発見も増えます。例えば、手作業の集計を簡易ツールに置き換えてみる、会議を15分短縮してみる、そんな小さな試みから大きな成果につながることもあります。
AIやRPAなどの最新技術も、いきなり全面導入ではなく、まずは一部業務から試してみることをおすすめします。
「思った以上に楽になった!」という場面もあれば、「ここはまだ人の判断が必要だな」と気づく場面も出てきます。重要なのは、導入ありきではなく、目的と現状に合うかどうかを見極めながら活用できる視点にたつことのように思います。
ふりかえりを習慣に
実行したら、必ずふりかえる、を習慣づけるのも大事だと思います。
そのこと自体、 「何がうまくいったのか」「想定外の副作用はなかったか」をチームで共有することですし、次の改善の土台になります。
この習慣が根づくと、業務改善は一度きりのイベントではなく、日常の延長になります。
改善は“いま”から始まる
業務改善のカギは、過去の成功体験ではなく、いま目の前の現状から学ぶ姿勢です。
現場をよく観察し、分析して、小さな仮説を立て、試し、ふりかえる。この繰り返しが、変化の激しい時代に対応する力を育てます。
そして何より、「改善は難しそう」と構えるより、「ちょっと試してみようか」の軽さが、成果への最短ルートになるのだと、わたしは考えています。
※組織こうどう研究所「業務改善の基本構造」研修より
