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研修後の「楽しかった」の、その先へ

〜研修設計から考える、学びが仕事につながる条件〜

研修が終わった後、こんな感想をいただくことがあります。

「楽しく参加できました」
「あっという間の時間でした」

企画した担当者にとっても、講師にとっても、うれしい言葉です。参加者の表情がほぐれ、会話が生まれ、会場が盛り上がる。そんな様子を見ると、「よい研修になった」と感じるのではないでしょうか。

けれど、一つだけ確かめたいことがあります。

「参加した人は、何を学び、何ができるようになったのだろう」

楽しかったことと、学べたこと。この二つは重なることもありますが、同じではありません。研修を設計するときには、その違いを意識しておくことが大切です。

「楽しい」は、学びの入り口になる

楽しい研修に意味がない、ということではありません。

緊張がほぐれれば、質問をしやすくなります。ほかの参加者とのやり取りを通じて、自分にはなかった見方に出会うこともあります。「もう少し知りたい」と思えることは、学びを進める力になるでしょう。

ただ、会話が弾んだことだけでは、研修の目的に近づいたかどうかはわかりません。ゲームに夢中になっても、そこでの経験が仕事と結びつかないまま終わることがあります。反対に、自分の対応をふりかえって言葉に詰まった時間が、大切な学びになることもあります。

楽しさは、学びを支える力になり得ます。だからこそ、その楽しさを通じて、何に気づき、何を身につけてほしいのか。そこまで考えておくことが、研修設計には必要なのです。

「わかった」と「できる」の間にあるもの

たとえば、部下との面談について学ぶ研修を考えてみましょう。

講師の説明を聞き、「相手の話を最後まで聴くことが大切だ」と納得する。ここでは、大切にしたい考え方を理解しています。

けれど、実際の面談で部下が黙り込んだとき、待つことができるでしょうか。自分と違う意見が出たとき、すぐに助言や説得を始めずにいられるでしょうか。

知識として理解していても、いざその場になると、いつもの対応に戻ってしまうことがあります。だからこそ、研修の中に、実際に「やってみる機会」を設けたいのです。

相手役を置いて練習する。自分の言葉や振る舞いについて感想をもらう。そのうえで、もう一度試してみる。

「わかったつもりだったけれど、意外と難しい」。その気づきから、練習すべきことが具体的になります。学べた研修には、理解を確かめ、自分の課題を見つける時間も含まれています。

盛り上がるワークを入れればよいのか

研修を企画するとき、こんなやり取りがあったとします。

「前回は説明が多かったので、今回はグループワークを増やしたいんです。参加者が楽しめる内容にしたくて」

参加する人のことを考えた、自然な工夫だと思います。ただ、ワークを選ぶ前に、確かめておきたいことがあります。

「そのワークが終わったとき、参加者に何ができるようになっていてほしいでしょうか」

たとえば、目的が「部下の話を引き出す質問ができるようになること」なら、管理職同士で面談の悩みを話し合うだけでは、質問を練習する機会が足りないかもしれません。

悩みを共有した後に、具体的な場面をもとに質問を考える。実際に相手へ問いかけ、どんな答えが返ってくるかを経験する。「なぜできなかったの?」と「どこで困ったの?」では、話しやすさがどう違ったかをふりかえる。

同じグループワークでも、目的によって内容も進め方も変わります。

先に「楽しそうなワーク」を探すのではなく、まず、仕事で必要な行動を描く。その行動を身につけるために、どのような経験が必要かを考える。わたしは、この順番を大切にしたいと考えています。

経験を、学びに変える時間

ワークを実施すると、予定よりも話し合いが盛り上がることがあります。時間が足りなくなり、「では、次に進みましょう」と、ふりかえりを短くしてしまう。研修の場では、起こりがちなことかもしれません。

けれど、体験したことの意味が、参加者全員に同じように伝わっているとは限りません。経験をふりかえり、そこで気づいたことを言葉にすることで、次の行動にどう生かせるかが見えてきます。

「相手の反応が変わったのは、どんな言葉を使ったときだったか」

「うまくいかなかった場面で、自分は何を急いでいたのか」

「職場で同じことが起きたら、次はどう対応するか」

こうした問いを通じて、経験と仕事を結びつけていきます。

講師が最後に正解を説明するだけでなく、参加者自身が、自分の経験を言葉にする。その時間まで含めて、一つのワークとして設計することが大切です。

学びが仕事につながるために

では、研修をつくるとき、何から見直せばよいのでしょうか。まずは、次の三つを確かめてみてください。

  • 目的を行動で表す
    「コミュニケーション力を高める」だけでは、何を練習し、何を確かめればよいかが曖昧になります。「部下の話を聴いた後、理解が合っているかを確認できる」など、仕事の場面が浮かぶ言葉にしてみましょう。

  • 目的に合った練習とふりかえりを用意する
    知ってほしい内容なら、説明や確認問題が役立ちます。対応できるようになってほしいなら、事例を考えたり、実際に試したりする時間が必要です。限られた時間に内容を詰め込む前に、参加者が取り組む時間を確保したいところです。

  • 研修後に試せる機会を考える
    「明日から生かしてください」と伝えるだけでは、忙しい日常の中で後回しになることもあります。「次の面談で、話を聴いた後に一度要約して確かめる」など、いつ・どこで・何をするかまで決めておくと、最初の一歩を踏み出しやすくなります。また、職場で生かすには、上司の理解と後押しも欠かせません。研修の目的と最初の一歩を上司とも共有し、実践した後にふりかえる機会を設けておくとよいでしょう。

研修直後のアンケートも、「楽しかったですか」に加えて、短い事例への対応を考えてもらうなど、目的に応じた確かめ方を組み合わせると、次の改善につながります。研修直後には、参加者がどう感じ、何を理解し、練習の中でどこまでできるようになったかを確かめます。それが実際の仕事でも生かされているかは、職場での実践後に確かめていくことが大切です。

「楽しかった」という感想は、うれしいものです。そこに、「自分の課題がわかった」「実際に試して、やり方をつかめた」という言葉が加わると、学びの中身も見えてきます。

参加された方の、研修を終えたときの笑顔と、その後の仕事での小さな変化。その両方を思い描きながら、「この時間を通じて、何を持ち帰ってもらいたいのか」を問い続けることを、研修づくりの出発点にしたいと思います。

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研修での体験を「楽しかった」で終わらせず、その先につなげていくには。
そんなことに関心をお持ちの方に、ご覧いただけたらうれしいです。

※自分で研修設計をされる方におすすめのワークショップです。
※研修の構造化を学び直したり、研修を実施するときのポイント(ファシリテーションのポイント)などを学べます。

私自身、公開ワークショップは3年ぶりくらいになります。
久しぶりの場を楽しみながら、参加される皆さまと一緒につくっていけたらと思っています。

この記事を書いた人

marco

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