リーダーシップについて語る時、
私たちはよく「職場は楽しくあるべきだ」といったポジティブな言葉を耳にします。
もちろん、楽しい雰囲気や和やかなコミュニケーションは、
チームの結束力や生産性を高めるために重要な要素です。
しかし、その「楽しさ」が他人に押し付けられるものであったり、
無意識に不快感を与える形になると、問題が生じます。
平澤知穂、昔話
私の経験をご紹介します。20代〜30代半ばにかけての話です。
あるリーダーが、日常の軽い話題を振りつつ
「仕事は楽しくしなくちゃ」と言いながらよく私に話しかけてきていました。
私は十分に楽しいと感じながら仕事をしていましたから
そのセリフを言われるたびに、ウンザリしてしまいました。
そして、その度に腕を掴まれたり、
背中をポンと触られたりすることがありました。
この行為は、大変不快に感じていました。
こうした一見親しげに見えるかもしれない関わり方は、
誰かが「触らないで」「押し付けないで」と感じる瞬間、
それは単なるコミュニケーションの一環とは言えなくなります。
もちろん、嫌だと思った人の主観だけが優先されるとは言いませんが、
現代社会では、身体的接触に関する考え方が大きく変わりました。
かつてはコミュニケーションの一部とされていた行動も、
職場であれば、
業務上必要かつ相当な範囲かどうかを考慮しながらその行為を考えなくてはなりません。
また、個々人のパーソナルスペースが重要視されるようになった
というパラダイムの変化も、その理由として挙げられます。
職場は仕事をする場所。
誰もが心地よく働ける空間でなければなりません。
たとえ悪気がない行動であっても、
受け手が不快に感じる場合、
仕事の成果に悪影響が生じる可能性があることを考えると、
そうした行動は尊重されないものとみなされるのが今の平均的な考え方になっています。
参考までに。
なぜ触れたり押し付けたりする行動が問題なのでしょうか?
第一に、身体的接触は相手の同意が必要です。
たとえ軽いタッチであっても、
相手にとってはプライバシーの侵害に感じられることがあります。
第二に、価値観や文化、個人の経験はさまざまであり、
触れられることで不快感やトラウマを刺激される人もいるのです。
リーダーとしての役割は、
チームメンバーの尊厳を尊重し、
彼らが安心して仕事ができる環境を提供することにあります。
また、「仕事は楽しくしなくちゃ」という考え方も、
時には重荷になることがあります。
楽しさは自然と生まれるものであり、
人それぞれ楽しさに差異があるものです。
無理に押し付けられるものではありません。
強制された楽しさは逆効果になったり、
プレッシャーに感じる人もいるでしょう。
リーダーは、チームメンバーの自然な感情を尊重し、
無理強いしないことが大切です。
相手の意志に反する身体的接触は避けることを意識していきましょう。
リーダーに大切なのは、
メンバーは、リーダーからの口頭での励ましや、
温かいバックアップで、十分承認されていることを感じられる上、
行動も促されるのだということを忘れないことです。
以前とは、求められるリーダーシップのスタイルは変わってきた現代ですが、
働くメンバーのために働きやすい職場環境を整備することには
変わりはないのですね。