

リーダーの無言の不機嫌が、職場の空気を曇らせる
中小企業の経営者の方と話していた時のことです。
「最近、うちの会社、なんだか元気がないんです」
業務ミスもトラブルもなく、成績もそう悪くない。
なのに、定例の会議では発言が減り、
部下からの相談もほとんどないそうです。
詳しくお話を伺っていくと、
社長さんはここ最近、プライベートで少ししんどいことがあって、
職場では元気がない(→あまり話をしない)とのこと。
この話には後日談があって、
「あの沈黙が怖い」と部下が話していたことを後から知ったそうです。
職場には“言葉にしないコミュニケーション”がたくさんあります。
その中でも、上司の機嫌は、チームの空気に静かに(でも、確実に!)影響を与える代表的なものだと私は思います。
言葉より先に、表情や態度が周囲に届いてしまうことも少なくありません。
立場が上がるほど、見られていることが増える

自分が思っている以上に、部下はリーダーの一挙手一投足を見ています。
「あ、今ちょっとイラッとしたのかな」
「なんだか急に口数が減った…」。
本人が意図していなくても、そう受け取られてしまうことがあります。
これは責めたいわけではなく、むしろそれが“リーダーであること”の特徴のように思えます。
つまり、立場が上がるということは、それだけ影響力が増すということでもあると思っています。
自分が放った小さな言葉が、想像以上の重さで相手に届く。
逆に、何も言わなかったことさえも、強いメッセージになってしまう。
私自身、講師として現場に入るときは、表情や声のトーンに無意識でいられません。
プライベートの私は、ほぼ、話をしません。
人と会う時に、スイッチを入れる感じです。
一度、素の私が出た時「こんなにオンとオフがあるの?」と、ドン引きされ、言われたことがあるほどです。
リーダーも同じように、無言のふるまいが周囲にどんな影響を及ぼすかを一度立ち止まって振り返ってみる価値があると感じています。
「あの沈黙、実は全員が察していた」リーダーの無意識の圧
以前、ある営業チームの研修で、「上司の沈黙が怖い」と複数の部下の方から声があがったことがありました。「いつもビクビクしてしまう」とお話しされていました。
このような“沈黙のメッセージ”は、表面上は何も起きていないように見えるだけに、放置されがちです。しかし、部下が「察してしまう」状態が続くと、自主的な発言や挑戦が減り、やがて「何も言わない方が安全」という空気になってしまうことも。
誰かが大きな声で指示したわけでもないのに、職場に重たい空気が流れていく。
その始まりは、もしかしたら「ちょっと不機嫌そうな上司の沈黙」だったのかも・・・。
無言の影響力があるからこそ、自分の在り方を見直してみる

とは言うものの、いつもハイテンションでニコニコしていましょう!という話ではもちろんなく、人間ですから、気分の波はあるものですし、リーダーだって疲れる日もあります。
ただ、「自分の表情や反応が、思っている以上に見られている」ということを知っているだけで、
意識も変わってきます。
無言の時間が続いたときには、「ちょっと今、集中していて黙っていました」など、
一言添える、それだけでも、周囲は「そうだったんだ」と安堵が生まれたりします。
リーダーが自分の在り方に気づくこと。
それは、チーム全体の安心感と活力をつくる要素だと、感じています。
忙しい毎日の中で、ふと「今、自分はどんな顔をしているかな」と思い返してみる。
そんな小さな内省が、職場の“空気”をやさしく整える力になるのではないでしょうか。
