リーダーが果たす役割とフィードバックの力
〜“導く”より“関わる”リーダーシップへ〜
どんなにチームの雰囲気が良くても、
リーダーの関わり方ひとつで流れが大きく変わることがあります。
リーダーの姿勢や言葉は、メンバーの安心感や意欲に直接影響するからです。
「リーダーシップ」と聞くと、
指示を出したり、チームを引っ張ったりするイメージが強いかもしれません。
けれど、これからのチームに求められるリーダーシップは、もっと柔らかく、人と関係をつくりながら導いていく力ではないかと思います。
■ リーダーの一言がチームを動かす
リーダーの言葉には、不思議な力があります。
「大丈夫、やってみよう」と言われるだけで前に進める人がいますし、
逆に何気ない一言で空気が重くなることもあります。
これは、リーダーが“場の温度”を決めているということだと思います。
リーダーが安心して話せる雰囲気をつくれば、メンバーも自然と意見を出しやすくなります。反対に、リーダーが構えてしまうと、チーム全体が静まり返ってしまうこともあるようです。
だからこそ、リーダーは
「どう導くか」よりも「どう関わるか」を意識する
ことが大切だと感じます。
指示するリーダーから、聴くリーダーへ
かつてのリーダー像は、“前に立つ人”でした。
しかし今は、リーダーが“後ろから支える人”になる場面が増えてきたように思います。
たとえば、会議で意見が偏っているとき。
リーダーが自分の考えを述べるより、
「○○さんはどう思う?」と問いかける方が、場が動き出すことがあります。
人は、話すことで考えが整理されるものです。リーダーが耳を傾け、受け止める姿勢を見せることで、メンバーの意見が引き出され、チームの中に“自分たちで考える力”が育っていく、そんな場面です。
1on1で信頼を育てる
リーダーとメンバーが一対一で話す「1on1」は、信頼関係を築くうえでとても大切な時間です。業務の進捗だけでなく、「最近どう?」というような雑談も含め、相手の気持ちや考えをゆっくり聴くことがポイントだと思います。
リーダーがメンバーの努力や悩みに関心を持つことで、
「見てくれている」と感じてもらえるようになります。
その安心感が、メンバーの主体的な行動につながるのではないでしょうか。
私の経験では、1on1の時間を「成果報告」ではなく「関係のメンテナンス」としてとらえると、チーム全体の空気が落ち着き、自然と話しやすくなっていくように感じます。
フィードバックは“指摘”ではなく“対話”
リーダーにとって大切なのは、フィードバックの仕方です。
フィードバックというと、どうしても「注意する」「評価する」といったイメージを持たれがちですが、本来は“気づきを共有するための対話”だと考えています。
特に効果的なのは、タイミングの良い短いフィードバックです。
たとえば、「あの説明、すごく分かりやすかったです」とその場で伝える。
それだけで、相手の行動は次につながります。
一方で、改善を伝える場合も、
「どうすれば良くなるか」を一緒に考える姿勢が大切だと思います。
「ここはこう直して」ではなく、
「このやり方を試したらどうだろう」
と投げかけることで、相手が主体的に考える余地を残すことができます。
フィードバックは“上から与えるもの”ではなく、
相手が受け取るものだ、というのがわたしの考えです。
ふりかえりがリーダーを成長させる
フィードバックを伝えるだけでなく、
自分の関わり方をふりかえることも、
リーダーにとって欠かせない時間です。
「今日の言葉がどう伝わったか」
「もう少し違う聞き方があったのではないか」
とふりかえることで、
リーダー自身の関係力が磨かれていくように思います。
チームを導く力は、完璧であることではなく、
「自分も成長の途中にいる」と受け止める姿勢から育つのではないでしょうか。
その誠実さこそが、メンバーの信頼を支える土台になるように感じます。
リーダーの仕事は、チームを“コントロールすること”ではなく、“チームの力を引き出すこと”だと思います。
メンバーの声を聴き、ことばを選び、ふりかえりながら関わる。
その積み重ねが、チーム全体を少しずつ変えていくのではないでしょうか。
次回は、最終回として
「信頼関係と持続的なチームワークづくり」
について取り上げます。
チームを育てるとはどういうことなのか、
一緒に考えていきたいと思います。








