M機能を鍛える具体的な技術
〜「聞く」から「聴く」へ〜
「私はこれまで、相手の話を『聞いて』いたつもりだった。でも実際は、自分の知識を被せるタイミングを『計って』いただけだった」
前回は、私が「理屈」を振りかざしていた真の動機が、議論のためではなく「自分を有能に見せる(自己呈示)」ためだったという恥ずかしい事実を認めました。 矢印が常に「自分」に向いている状態。これが私のコミュニケーションの病理でした。
この矢印を「相手」に向けるために必要なこと。それは精神論ではなく、具体的な「技術」です。今回は、PM理論のM機能(集団維持)を高めるための核心的スキル、「アクティブ・リスニング(積極的傾聴法)」について、学び直しのプロセスを共有します。
M機能の正体は「聴く力」
PM理論において、M機能(集団維持機能)とは「集団のまとまりを維持する能力」ですが、その具体的な行動指針として、多くの文献で「メンバーの話を聞くこと」や「悩みに寄り添うこと」が挙げられています。
聞く(Hearing)」と「聴く(Listening)」の違い
人材育成(OJT)の分野では、ただ音が耳に入る「聞く」と、相手を理解しようとする「聴く」を明確に区別します。今回取り上げたいのは、カウンセリング理論に基づいた「アクティブ・リスニング(Active Listening)」。まだまだ、そこが浅い状態だった、わたし。と気づきました。
ビジネス用語集の定義によれば、アクティブ・リスニングには重要な3つの要素があります。
1. 態度・姿勢(Non-verbal): 相手の方を向き、視線を合わせ、うなずく。
2. 伝え返し(Paraphrasing): 相手の言ったことを繰り返したり、要約して確認する。
3. 共感的理解(Empathy): 相手の立場に立ち、「あたかもその人になったかのように」感じる。
録画の中の私は、これらがすべて足りない状態だったと思います。欠落しているものもありました。
すぐに自説を展開し(遮断)、相手がどう感じるかよりも自分の論理を言語化することを優先していました(共感の欠如)。これでは、M機能が「ゼロ」と判定されても仕方がありません。
「バックトラッキング」の持つ威力
特に痛感したのは、「伝え返し」の重要性です。
「〇〇というわけですね」と相手の言葉を繰り返す。
「伝え返し」は、単なる確認ではありません。「私はあなたの話を、あなたと同じ重さで受け止めました」というメッセージでもあります。 人が「話を聞いてもらえた」と感じるのは、自分の投げたボールをリーダーがしっかりと胸で受け止め、投げ返してくれた時です。
私がやっていた「先回り」や「要約」は、例えるならば相手のボールをバットで打ち返すような行為でもあります。
「口」を閉じて「耳」と「心」を開く
私はあるトレーニングを自分に課しています。
それは「1on1ミーティング」の場において、「沈黙」を意識することです。
相手が自分の言葉を探し当てるまで、じっと待つ。 そして出てきた言葉を、「そうか、そう考えていたんだね」と受け取る。幸いわたしは、日頃、すぐに「でも〜〜じゃないですかね」「だけど、〜〜が本来だと思うのよ」とすぐに切り返される経験が多く、そのピッチャー返しがいかに心的に強烈かを知っていました。(自分が投げたボールがいけなかったんだ、と反省していたので、どんどん話さなくなっていったし、話すのが面倒になっていった、という悪循環)
それが溜まっていたのかもしれません。
成人発達理論のワークショップでは、日頃、発言したくても黙っている分、大いに質問をしてしまいました。(話が横道に逸れてすみません)
さて、本筋に戻さねば!
「聴く」ことは、受動的な行為ではありません。
相手にスポットライトを当て続ける、極めて能動的でエネルギーの要る行為です。
これができてこそ、相手を理解するための知恵へと変わるのです。
わかっているなら「いつも」そうしろ、って話です。
できる時とできない時がある。
それはわたしの、乗り越えたい課題です。







