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経験を「知恵」に変える技術④

体験を「一生モノの知恵」に変える技術

ビジネスの現場において「経験豊富」という言葉は、必ずしも称賛とは限らないようです。
同じ年月を重ねながら、ある人は「一生モノの知恵」を携えた賢者へと成熟し、ある人は単に過去の成功体験を反復するだけの「慣れた人」で成長が止まる。
この残酷な格差は、どこで生まれるのでしょうか。

その鍵は、出来事の積み重ねを自己変革へと昇華させる「体験学習(Experiential Learning)」のサイクルを回し切れているかどうかにあると思います。
現代のリーダーに共通する悲劇は、目に見える「成果(コンテント)」に固執し、その背後で蠢く「過程(プロセス)」に対して盲目であることのように思えます。真の成長とは、単なる知識の蓄積ではなく、自己の「学びの守備範囲」を意識的に広げ、体験を自分だけの動かせない知恵へと再構築し続けるプロセスに他ならない、それがわたしが考えていることです。

「ラボラトリー方式」という教育の冒険:その重みと本質

「体験学習」の源流である「ラボラトリー方式」は、決して一過性のブームではないと思います。

その歴史は、1946年に社会心理学者クルト・レヴィンらによって行われたワークショップにまで遡ります。日本へは1958年に導入されたと言われていて、1973年あたりには南山短期大学に人間関係科が誕生した、と聞いています。

この教育法は、当初「教育の冒険」と呼ばれていたそうです。南山大学の先駆者たちは、学生の主体性を尊重するあまり「出席をとるべきか否か」という教育の根幹に関わる大前提さえも、涙を流しながら夜通し議論したというDNAを持っているそうです。

この学習法の核心は、日本の体験学習の先駆者である星野欣生氏が説くように、「プロセスから学ぶ」ことにあります。

「プロセスとは、結果の良し悪しではなく、その瞬間に何が起こっていたか〜自分がどう感じ、相手がどう反応したかという『関わりの質』のことである」

かつて星野氏が参加したTグループ(人間関係トレーニング)では、最後のセッションの1時間半、誰も一言も発しない沈黙が続いたといいます。お土産(結論)を期待して参加した星野氏は当初、満足度「マイナス3」をつけ「金を返せ」と憤慨したと言います。しかし、後にその沈黙という「プロセス」を丹念にふりかえったとき、そこには自身の行動特性や対人関係のパターンが凝縮された「宝の山」があったことに気づいたそうです。

「経験学習のサイクル」:4つの局面

すでに何度かご紹介してきた経験学習の循環

1. 具体的経験(Concrete Experience)
  計画された活動だけでなく、「今ここ」で湧き上がる衝動や、直面した困難に身を投じること。

2. 反省的観察(Reflective Observation)
 状況を多角的にモニタリングし、何が起きているのかを把握する。

3. 抽象的概念化(Abstract Conceptualization)
 観察から得た気づきを整理し、自分なりの理論や「知恵」を形成する。

4. 能動的実験(Active Experimentation)
 形成した仮説を新しい状況で試し、検証する。

このサイクルを回す際、わたしが気をつけていることは、先覚者たちのメッセージです。

「反省的思考は、不確実・当惑・矛盾・困難などのある状況から出発する。(中略)次に、状況の諸条件を探索・調査・決定する。すなわち、問題を確定し、アイディアを明瞭にするプロセスである。」(ジョン・デューイ『思考の方法』)

「アクションリサーチでは、学習者が実行と効果をモニターすることから事実が発見される。(中略)螺旋的に新しい事実の発見と分析が繰り返され、単一の事例から法則性が見出される。」(クルト・レヴィン『解決すべき社会葛藤』)

自分の「タイプ」を破壊し、学びの守備範囲を広げる

私たちは無意識に、自分が得意なステップから学びに入ります。
しかし、「自分はじっくり考えるタイプだから」というレッテルは、「学びの機会を奪う壁」なのかもしれません。真の知恵を得るためには、あえて「苦手な入り口」に踏み込み、守備範囲を広げることが不可欠です。これについては、前回、コルブの見解をもとに書いています。→https://0comb.com/2026/02/10/keiken3/

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marco

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