
「ちゃんと聞いてるよ」と思っていても、実は“聴けていない”ことってありませんか?
会話の中で、相手の話を聞きながらも次に自分が何を言おうか考えていたり、スマホをチラ見しながらうなずいていたり……。私自身も、忙しい時にはつい「ながら聞き」をしてしまうことがあります。
“聞く”は音が耳に入ってくる受動的な行為ですが、“聴く”は心を込めて相手の話に意識を向ける能動的な行為です。この違いが、実はチームにとって大きな意味を持つ事例をご紹介します。
声が届かない職場で起きた、信頼の崩壊
ある営業チームで「意見を自由に出して」と会議を開いたものの、部下たちの反応は薄く、会議が終わってからも改善案は出てこないまま、ということでした。ところが、ある日ポロッと若手社員が口にしたそうです。「どうせ言っても変わらないんですよね」と。
その一言に会議室がピリッとしたそうですが、何事もなかったように話は先に進んだそうです。以前に、メンバーから挙がった提案に対して、「今は現実的じゃないね」と即座に帰ってきたこともあったそうです。もしかすると、その時は時間がなかっただけかもしれませんが、部下にとっては「聴いてもらえなかった」と感じる瞬間だったようです。
それ以来、メンバーはリーダーの様子を見て何も言わなくなっていった…。チームの中に「話しても意味がない」という空気が広がったようです。
耳を傾けるだけで、チームがひとつになった日
「否定しない」「最後まで聴く」「目を見てうなずく」
部下の話をしっかり聴く。
仕事の話だけでなく、最近嬉しかったことや困っていることも。
最初はぎこちなくても、マインドセットして心を決めるのです。
「今日、みんなの様子はどうかな?」
「先週、〜〜さんは落ち込んだ顔をしていたけど、どうなったかな」
「〜〜の件、うまくいったかな?不安そうにしてないかな」
など、気にかけることを事前にすると「聞こう」というマインドセットになります。
この小さな繰り返しが、共感へとつながっていく一歩だと思います。
こうした「きく」姿勢は、問題を早期にキャッチできるようにもなるし、手戻りもすくなります。特別なスキルや仕組みではなく、ただ「耳を傾ける」ことがチームを新しいステージにアップデートすることにつながります。
まずは一歩、目と心を向けるところから
「聴く力」は特別な才能ではありません。
目と心を向けて「その人の話に集中する」ことから聴くことは始まると思います。
もちろん私も最初からうまくできたわけではなく、何度もうまくいった気がしない状態でトライの繰り返しでした。
実際、リーダーの皆様の支援をしていると「部下の話を聴くには時間も気力も必要」という声がきます。ですが一方で、「それが自分の仕事」と志高い言葉も耳にします。
部下のすべてを受け止めることが難しい場面もあると思いますが、そんな時は、「今、話してくれてありがとう」と一言添えるだけでも、相手の心に届くものがあります。
チームを強くするために、まずは“聴く”というシンプルだけど奥深い力を見直してみませんか? きっとその一歩が、メンバーの信頼を育て、前向きな職場づくりへとつながっていくはずです。
