「見える人」が、チームを導く
これまでのコラムでは、WBSをテーマに、
管理者自身が学ぶこと、
部下を支援すること、
チームの共通言語にすること、
そしてチームの文化が変わることについてお話ししてきました。
最後に、もう一つ触れておきたいことがあります。
それは、仕事を分解できる人が、自然とリーダーになっていくということです。
リーダーというと、
決断力がある人
発言力がある人
人を引っ張る力がある人
そういうイメージを持つ方も多いかもしれません。
もちろんそれも大切な要素です。
しかし現場で見ていると、
本当にチームを前に進めている人は、
少し違う力を持っています。
それは、
仕事の全体像を見える形にできる力です。
仕事が大きくなるほど、
目の前にはたくさんの情報があふれます。
何から手をつければいいのか。
どこが重要なのか。
何がまだ決まっていないのか。
そうしたものが混ざり合い、
状況は少しずつ複雑になります。
このときチームの中には、
二つのタイプの人が現れます。
一つは、目の前の作業に集中する人。
もう一つは、仕事の構造を整理し始める人です。
「まずこの作業を分けてみましょう」
「ここはまだ決まっていない部分ですね」
「この工程が終われば次に進めます」
こうして仕事を整理していく人が現れると、
チームの空気は少し落ち着きます。
なぜなら、
仕事の見え方が整うからです。
人は、見えないものに対して不安を感じます。
何をすればいいのか分からない。
どこまで進んでいるのか分からない。
そんな状態では、動きにくくなります。
しかし仕事が分解され、
構造として見えるようになると、
「まずここからやればいい」
「この作業は終わっている」
「次はここを進めよう」
と、次の一歩が見えてきます。
つまり、仕事を分解するということは、
人が動ける状態をつくることでもあるのです。
これは、まさにリーダーの役割に近いものです。
リーダーとは、
すべての答えを持っている人ではありません。
むしろ、
チームが前に進める状態を整える人だと思います。
そのために必要なのが、
仕事を構造として捉える視点です。
WBSは、そのための一つの道具です。
もちろん、リーダーになる人が
必ずWBSを書いているわけではありません。
ただ、仕事を分解できる人は、
自然と次のようなことができるようになります。
大きな仕事を小さく整理する。
優先順位をつける。
不確実な部分を見つける。
役割を明確にする。
そしてそれは、
チームを前に進める力につながります。
もう一つ、興味深いことがあります。
仕事を分解できる人は、
自分の仕事だけでなく、
チーム全体の仕事を見渡せるようになります。
すると自然に、
「ここは私が手伝えます」
「この工程は先に進めておきます」
「ここはまだ決まっていないようですね」
といった行動が生まれます。
こうした姿を見て、
周囲の人は思います。
「この人がいると仕事が進む」
「この人に相談すると整理できる」
そして気がつくと、その人は
チームの中心に立つようになります。
それは役職としてのリーダーかもしれませんし、
そうでない場合もあります。
けれど、確実に言えることがあります。
仕事を分解できる人は、
チームにとって必要な存在になるということです。
もし若手の方がこのコラムを読んでくださっているなら、
一つだけお伝えしたいことがあります。
リーダーシップは、
特別な役割になってから発揮するものではありません。
むしろ、
目の前の仕事を整理することから始まります。
この仕事は何から成り立っているのか。
何がまだ見えていないのか。
次に進むためには何が必要なのか。
そうしたことを考える習慣が、
少しずつ視野を広げてくれます。
そして気がつくと、
周囲の人があなたの言葉に耳を傾けるようになります。
仕事を分解する力は、
派手なスキルではありません。
けれどそれは、
混乱した状況の中で道筋を見つける力です。
そしてその力こそが、
チームを前に進めるリーダーシップの土台になるのだと思います。







